5231声 たこを抜いたたこ焼き

2022年09月04日

高崎まつり真っ最中であったが、高崎でひとつ用事があり、そのついでに高崎市内を歩いた。ふと調べたら高崎電器館で是枝裕和監督『ベイビーブローカー』上映最終日で、是枝作品はほとんど見てきたので観に行ってみた。この映画は韓国で撮影されておりキャストもオール韓国キャスト、主演のソン・ガンホがカンヌ男優賞を受賞したニュースを覚えている人もいるのではないか。捨てられた子どもを、子どもを欲する家族に高額で売る男たちが、捨てた女と共に旅をするロードムービーであり、結果として是枝作品っぽい「一般的には底辺と言われる人たちが、社会や現実と格闘しながらも、人生における大切なものに気付く」作品だった。個人的には、これをオール韓国作品と見ていたらただ良い映画だったと思ったかもしれないが、わかりやすい形での是枝作品として進んでいく事が気になってしまった。

 

映画の前には少し腹ごしらえと、昼を過ぎているのにまだ始まらない祭り屋台やイベントの脇を通り抜け、スズラン地下街へ行った。最近、体に良い弁当や総菜を売っている「だるまだるま」の話を知人としたばかりだったので、そこでイワシ煮が乗った弁当を買って、そばの立食黙食コーナーで肩を狭くして食べた。周囲には祭り特有の高揚した家族連れなどが多く、僕の隣では小学3年生くらいの男の子とその子の母親的な女性が立食で、総菜や弁当を食べていた。「スズラン来るのは初めて?」「うん」というやりとりをしているので、母子ではないのだろうなと思った。「私ちょっとあっち見てくるから」的なことを言って女性が離れる。僕は、なんとなくその男の子を見た。すると彼は【たこ焼きの長い楊枝を使って、少し不器用にたこ焼きからたこを抜き、たこが抜かれたたこ焼きだけを食べていた】。僕も彼くらい小さい時は固いたこが嫌いだった気もするし、特別な事ではないのだが、母親ではないっぽい人とデパ地下にいる子がそのようなことをしている様子が、記憶に残った。

 

今日を振り返るに、案外、そういう記憶から映画は作られるのかもしれない、と思った。乱暴な言い方だけど。