5237声 路地裏に置き忘れたものは

2022年09月10日

中之条町観光協会によるe-bike(電動自転車)の広告制作のため、今日は一日スチルカメラマンとして中之条を巡った。

 

あっという間に秋である。稲刈りは2~3週間前とのことで山間は行く先々で一面の黄金色だった。得に、「美しい村連合」にも選ばれている伊参地域の棚田は美しく、晴れ間も見えた今日、山を下ってきたそよ風に薄黄色の色がつくんじゃないかというくらいにそよそよと、稲の絨毯がゆらめいていた。とはいえ、その一部は田植えを辞めてしまったそうで、「この景色もあと何年見られるのかな」という(他人事っぽいので自分でも好きではない)そんな考えもよぎってしまった。

 

そのような山部と地続きに、中之条町つむじから駅の方へ下って行って、林昌寺あたりからUターンして川沿いを役場方面に登っていったりして、そういう町での撮影も楽しかった。特に路地は、僕が物心ついた時から歩いてきた道なので、感情のレイヤーが多層すぎてよくわからない気持ちになる。今日のメンバーに一人、町外から来た若めの女子がいたことも、それにより新しいレイヤーができる感じがして良かった。懐かしい人には懐かしく、はじめての人には新しい。当たり前だ。

 

この町で暮らしてきた年月を考えると、ずいぶんいすぎるなとも思う。多感な時期には泣きながら歩いた路地もあった。そんな路地裏に置き忘れてきたものがあるとしたら、なんとなく「誠実さ」である気もする。今が不誠実というわけでもない気がするが、なんとなく。