5256声 この道何十年かのビーフシチュー

2022年09月29日

中之条町観光協会制作による温泉×地元俳優のドラマシリーズ「中之条ぽわぽわ」。そのドラマパートは今月撮影が終わっていたのだが、ドラマの後に流れる情報映像の撮影を行うために再び四万温泉を回った(ドラマパートの撮影は映画カメラマンの角洋介くんが行うが、情報パートは毎回僕が撮影を担当させてもらっている)。

 

甌穴や、奥四万湖などの名所を1つ1つ撮影していく。今日は絵に描いたような秋日和で、四万ブルーもいつも以上に蒼く見えた。途中、観光協会の原澤さんらと昼飯はどうしようという話になり僕ははじめて伺ったのだが、日向見にある洋食屋「摩耶」の戸を開いた(店の入り口とトイレの入り口がいわゆるウエスタンドア?的な中央から左右に開くドアで、店内も昭和レトロな感じであった)。

 

こういう時に来たら、出し惜しみしちゃいかんよね、と看板メニューであるというビーフシチューのセットを注文。カウンターの奥では、この道何十年と思われる高齢のシェフと、その奥さんかな、とても息の合った様子でマイペースに仕事をこなしていく(時々シェフが奥さんかなにダメ出しのようなことを言っているが、それも日常なのだろう)。コーンスープ、サラダ、ビーフシチューと順に運ばれ、仕事途中の昼食はぐんと華やかなランチになった。ビーフシチューのビーフはスプーンで切れる柔らかさ。なによりシチューが、深い。いろんな野菜とかワインとか入っているのだろうが、その深さはこの道何十年が出す味のような気がした。

 

ふとした話で、来年2月頃にはもう店を閉めるつもりである事を伺った。ふと、絶メシ、なる言葉が頭に浮かんだが、不謹慎な気がして頭から追いやった。初めて足を運ぶ身、こんなに美味しくて雰囲気があるのにもったいないですね、という言葉も不謹慎。店に思いを感じたのなら黙って足を運ぶだけで良いのだから。けれど、新しい店が次々にオープンしていく四万温泉にあって、辞めていく店もある、という当たり前のことに時間の流れを感じた。

 

おなかいっぱいで店を出たのに、摩耶と同等かそれ以上にこの道何十年感のある四万温泉の名店「一力鮨」が食べたくなった。