5355声 浅間山を眺める牛

2023年02月05日

北軽井沢へよく行くようになった。

交際が理由なのだが、数か月経っても「よその場所へ出向いている」感があった。普段の環境と北軽井沢の環境があまりに違うからだ。普段の環境、はかなり劣悪で1年前は中途半端に町中な会社で暮らすような生活。キッチンもなくコンビニ弁当をかっこんではソファーで寝ていた。そこから北軽井沢へ行くとまず違うのが雄大な浅間山のお膝元だということ。「生命力のないお前がなぜここに来たぁ」などと山は話さないが、圧を感じる。そして薪ストーブのある家。はじめの方、それはもう旅行であった。

1年以上が過ぎ、普段の環境と北軽井沢の環境には未だ埋められないギャップがありながらも、慣れというものはすごいもので、北軽井沢にいても、ここに来ても良いのかもなと思えるようになった(まだ受け身)。そうすると、行っても見えていなかったことを見たいという余裕も出てくる。

浅間山のふもとは平地が広がる。まっすぐな道が多い。日中であっても寒空の下(濡れたタオルぶん回したらシャキーンと凍る)てくてく歩いた。はじめて歩く道、簡易的な柵の向こうに牛たちがいた。僕らを見ても微動だにしない。周囲は雪に覆われていたが、ふんをしたところは温かいのだろう、雪が溶けかかっていた。そこからは浅間山がとても広く、とてもきれいに見えた。

牛たちはこの山を見て、何か思うのだろうか。見慣れるなどということがあるのだろうか。