5376声 失敗するべきなんだよね

2023年02月26日

4月に開催する「歌の生まれる場所」寺尾紗穂LIVEのフライヤーが完成し(デザインはあしか図案の殿岡さん)、フリッツ・アートセンターに取りに行った。僕と共に、寺尾紗穂さんの群馬での演奏を実現させたい、と手を挙げたのが、殿岡さんやフリッツの小見さんだった。

フリッツ・アートセンターは特別な場所である。敷島公園に隣接する穏やかな場所にある絵本専門店。ミキハウスと行っている宮沢賢治の小説を全作品絵本化する、という取り組みは偉業でしかないし、絵本以外の本のセレクションも良い。店の入り口には日替わりで店主が変わるコーヒースタンドがあり、敷地内にはプレッツェルも変えるパン屋もある。フリッツは店であり、村であり、文化である。

店主小見純一さんは、前橋にて様々な文化活動を行ってきた方で、尊敬しかない。僕が映画学校卒業後に群馬に戻り、24歳くらいの時にはじめて応募した映像コンテスト。僕が作ったたわいもない映像を審査員だった小見さんが好きだと言ってくれてからの関係である。近年でも映画『影踏み』の撮影もフリッツでやらせてもらったり、荒井良二さんの展示を見に行ったり。小見さんと顔を合わせることはよくあるものの、今回の寺尾さんのライブのように一緒に何かを行うのは今回がはじめて。今日も、コーヒーをごちそうになりながら話をした。

今はイベントでもフライヤーの印刷はせずにネットだけで周知したり、音楽もCDではなく配信が主流になったり、物を通さないというような話から、でも紙やCDやレコードは良いよねという話になり、昔はごそっとレコードを買って1~2枚良いものがあればそれで嬉しかったという話を聞いた。「今の若い人は(目当てのものしか見ない、聞かないから)むしろ失敗するべきなんだよね」と小見さん。確かに、良い音楽、良い映画、良い人との関係だけで今の僕ができたとは思わない。むしろ、不快な音楽、知る人がほとんどいないが印象に残っている映画、もう会いたくもない人の記憶は、案外残っているものだ。

配信やyoutubeを開けばすぐに音楽が聴けてしまう時代。わざわざフリッツ・アートセンターに足を運んで、わざわざ北軽井沢ミュージックホールに足を運んで、寺尾さんの音楽を聴いてほしい。良い本番にしたいと思う。

歌の生まれる場所インスタグラム(チケット販売は3/1より)