5411声 節目に思うこと

2023年04月02日

昨年はつらかった話で4ヶ月前のひとこえが終わり、もどかしいまま、その後もなかなかうまくいかない工事が続いたが、3月に店がオープンして毎日を過ごすうち、少しずつ、落ち着きを取り戻せるようになってきた。

悲しみがわからないと人生は始まらないと思っている。けれども悲しみが深すぎてしまうとそれを跳ね除けるのは容易ではなくなる。押しつぶされてしまうことだってあるだろう。

他者否定の克服はつらさを助長し、自己を傷つけもする。昨年はたくさん自分を傷つけた。けれども店がオープンして仕事ができるようになり、落ち着いていられる時間が増えた。何事もなく全力でお客様に向き合える時間がありがたい。

それで、よーく考えた。そろそろ自分はいいかな、と思った。自分の中のいろいろを放棄するのは、もうこのタイミングなんじゃないだろうか。

中島みゆきさんがうらみ・ますを世に出したとき、彼女は28歳だった。その後39歳で誕生を、49歳で樹高千丈落葉帰根、51歳で銀の龍の背に乗って、このあたりから、自分を、ある面においては放棄した曲の、歌詞の割合が増えた気がしている。ナイトキャップスペシャル、命のリレー、一期一会。そして60歳で恩知らず。

人生が自分のものだと思うやり方では、私はもうこの人生を乗り越えられない。自分はなにかのための容器だと思うことにした。いい機会だと思う。50歳という節目でもあるし。

私は独りが嫌いです/それより戦さが嫌いです/それゆえ違う土地へゆき/懐しがろうと思います(樹高千丈落葉帰根)

失うものさえ失ってなお/人はまだ誰かの指にすがる/柔らかな皮膚しかない理由は/人が人の傷みを聴くためだ(銀の龍の背に乗って)