(本日、ショップ用の紙しおりを届けたフクロコウジについて、過去noteに書いたものを転載)
四万温泉を保有する群馬県中之条町のはしっこ、市城地区に「フクロコウジ」という妙ちくりんな名前をもった旅と本と人との接点を提唱する小さな店が出来る(2023年7/1オープン)。店のロゴは町在住のアーティスト・clemomoが担当。僕はショップカードや名刺のレイアウトを担当させていただいた。
敷地として、手工芸や雑貨の店「うた種」と併設した形となる。うた種店主の曽根原さんと、フクロコウジ店主の原沢さんはご夫婦。中之条町である程度暮らす人であれば、その顔が浮かぶ人もいるはずだ。
原沢香司さんは中之条町生まれ。都内の旅行会社に勤務し(その会社は特殊で、在職中にはアウシュビッツやチェルノブイリへの視察も行ったそうな)、地元中之条町の観光協会に勤務。その時に僕も長く仕事をご一緒した。僕も関わらせていただいた、各温泉をドラマ仕立てで紹介する飯塚花笑監督「中之条ぽわぽわ」シリーズや、観光地ではなく町に暮らす人の人生を通して町を知らせる小冊子「nakabito」は、原沢さんなくしては成立しなかったものと僕は思っている。
ある時ふいに原沢さんから「観光協会を辞めて、旅行案内や人紹介ができる本屋をはじめます」と言われた。その思い切りの良さに驚きつつも、僕もそうだけど彼のそれまでを知っている人にとっては納得の選択だったように思う。ここで多くは書かないが彼は町議選にも出馬。まだ始まったばかりだが若手町議として町の未来にも奔走している。
この店について、まずみなさんなぜと思うのは「フクロコウジ」という名前かもしれない。原沢こうじだからフクロコウジ、という言葉遊びもあるが、本人曰く「自分は色々行き詰る性格なのだけど、旅先や本や人との出会いで救われているから」なのだそうだ。ネットが生活の一部となった今、本屋なんてものは正気な人は開けない(誉め言葉のつもりです)。原沢さんが提案する旅も、万人受けはしないが一部には熱狂を生むものを目指している感じがする。顔の見えない大勢に向けた仕事ではなく、顔の見えるあなたに向けた仕事。
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話がフクロコウジから離れるが、かつて中之条町のどん詰まり、六合地区にたった一人で糸つむぎから染色から機織りまでをこなす行松啓子さんという作家が住んでいた(現在はご家族のいる関西へ戻ってしまった)。行松さんが話していた「どん詰まりだからこそ、六合には文化が残っている」という一言は、とても感慨深く今も覚えている。大きな道路が横断する場所であれば、人や物は便利を求めて古いものを捨て去っていたかもしれない。けれど裏は山でその先に何もないからこそ、そこに留まった少数の人は草履編みや木鉢作りなどの文化を今の時代まで残してきた。そのどん詰まりであるからこその豊かさは、同じくどん詰まりである四万温泉にも通じるものがある。
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まちのはしっこの紅葉の森の中、フクロコウジの小さな扉を開くと、旅や人生にまつわるピカピカの新書と、ニコニコした原沢さんが出迎えてくれる。本を購入して隣のうた種で美味しいコーヒーと共に読むも良し、「これから暇なんですけどどこ行けば良いですかね」と尋ねるも良し、人生相談も・・多分聞いてくれるはず。
さあ、あえて、フクロコウジに飛び込もう。
フクロコウジHP
https://fukurokouji.studio.site/