5528声 演劇と映像

2023年07月28日

演劇と映像。これもここに何度か書いていることかもしれない。太田市在住の劇作家・加藤真史さんによる劇団微熱少年の舞台を、その第一作からずっと映像で記録している。もともとは、前橋文学館で加藤さんが演出した『わたしはまだ踊らない』という朗読劇を撮影したことに始まった。僕は映像化された演劇を多数観てきた、というわけではないが、都度ごとに会場もキャストも変わる演劇をどう撮影しどう編集するか、についてその頃から今に至るまで関心をもっている。

例えば人物が3人いる。できれば、3人すべてが映っている絵と、それぞれが映っている絵がほしい(カメラの用意できる数で3人別々ではなく、2人、1人という場合もあるが)。話される会話。その時に、Aさんが話している時にどこを見せるのか。

舞台観劇であれば、客席から3人すべてを見ていることだろう。けれど、観客1人1人がそれぞれに、その時誰に注視していたか、誰の声を聞いたいたかには違いがあるのではないか。

映画で使われる手であるが、話している人だけを映像で見せるのは面白くない。聞いている顔の芝居もある。役者は、そして演出家は、もちろんそこ(話していない人の挙動)まで稽古をして本番に挑むのだが、映像でもそんな<今この瞬間に見せるべき場所はどこだ>という絵で繋いでいく。

あるいは、言い合いのような両者のセリフが応酬する場面ではカットは短めにぱっぱっと繋ぎ、余韻がほしい場面ではカットを長めに繋げる。

それが映画とどう違うかと言われたら(実際、演劇をほぼ映画のように記録する映像作家もいると聞く)、<より生なものを映像でも残したい>という希望がある。それが今まででやれたかというと・・100%の自信はない。けれど、考える楽しさがある。

コロナ禍が軽減し、演劇に限らず人が入れるようになったことはとても喜ぶべきことだが、開催のための、そして映像化のための補助金が難しくなるということでもある。劇団微熱少年の新作『すべて重力のせいだ』『構造なり力なり』の映像化にあたって、加藤さんが中心となりクラウドファンディングを行っている。関心のある方はぜひとも応援いただきたい。

演劇/微熱少年『すべて重力のせいだ』『構造なり力なり』を映像化して届けたい!