アートに詳しくない、という人も、奈良美智という名は聞いたことがあるのではないか。名に覚えがなくても、あのちょっと目つきが悪い子どもの絵、は一度は見たことがあるに違いない。
群馬県渋川市にある美術館「ハラミュージアムアーク」では、奈良さんの作品を常設展示している。今現在、奈良さんの故郷である青森の「青森県立美術館」で彼の大規模な個展「The Beginning Place ここから」を開催しており、渋川にあった奈良さんの作品も青森に貸し出されている。その間、新たに映像や写真、ドローイングを展示するというので、本人がそれを展示する様子やインタビューを撮影させていただいた。
奈良美智インタビュー(Full Ver.)原美術館ARC
そして今日は、県外からも多くのファンを招いてのトークだった。撮影のために機材を運び込む。トーク会場が奈良さんの彫刻作品をはじめ、プライスレスな作品が展示された展示室というのだから撮影もちょっと緊張した(壁際にカメラ置いたりしたからね)。
青森の展覧会もあり、話は青森での奈良さんの幼少期の話から始まった。昭和34年生まれの彼。田舎で撮られた生まれた頃や子ども時代の写真を見るに、日本アート界のトップランナー的な華やかさはない。もともと美術家を目指していたわけでもなく、絵が上手いよねと周りに言われて(なんで皆下手なんだろうと思っていたらしいから流石だ)美大へ進んだ。小学校の頃の集合写真を見て、驚くべきことに名前を今も覚えていて、だれだれはこうで、だれそれはこうで、と話している様子を見て、子どもを描き続ける彼の中ではきっと今も、その頃の思い出が大切なのではないか・・などと撮影しながら話を聞いていた。
「(今は)写真が面白い。キャンバスを貼ると、絵を描かなくちゃいけなくなるから」という話には、絵の成功者であることの辛さもあるように思った。多くの人が画家・奈良美智を求める中で、それに応えていた時期もあったろうし、子どもたちと一緒に絵を描いて値が付かないような作品を作る今もあるし、むしろ人のためにではなく自分のために描いていくこれからが続いていくのだろう。
成功者であることの辛さ・・・一度は味わってみたいなぁ・・・