若い時に良くなかったなと思っていたことが、今の年になってみると良い、ということはある。もちろんその逆もある。草津温泉に登っていく手前(中之条から見ると手前奥)、嬬恋村の「半出来温泉(はんできおんせん)」の若い時に行った印象はあまり良くなかった。今思うと泉質なのだと思うが、湯船がぬるぬるしていたイメージが強く、もっと入りやすい温泉はたくさんあると思った。
この日、10年以上ぶりか、半出来温泉に行った。良いではないか。まず何より、今はとても良い季節だった。温泉は吾妻川の川辺にあり、新緑が進んだ今の季節、川にかかるように藤の花が薄紫に咲き流れていた。色々な花が植えてあり、色も鮮やかで香りも良い。露天風呂は混浴であり、僕がぴゅーっと行った時は1人だったので、花を眺めながら湯に浸かっていた。湯温はぬるい。
お湯はうっすら白く濁り、黒い湯花がちらついている。ちなみに、半出来というのは土地の小字からとっているらしいのだが、廊下に貼られた新聞に「この土地はやせていて、野菜などを作っても半分の出来だから半出来、という謂れがある。でもそうじゃなくて、この地域の人はとても、という意味で<なから>という方言を使うんだけど、半=なか、半出来温泉は、なから(とても)良い出来の温泉、という意味であると思う」という先代かな、温泉主が語る取材記事があって、とても良いなと思った。これからの季節におすすめしたいぬる湯である。