久しぶりに太田市美術館・図書館で仕事だった。撮影が終わり、せっかくなので展覧会も見ていくことにした。26日までの展示だが「本と美術の展覧会vol.5 あふれる、うごめく、のめりこむ。―絵本原画とアートの空間―」と称した3人の絵本作家、田島征三氏、ミロコマチコ氏、舘野鴻氏による展覧会を開催中だった。
田島氏、舘野氏の展示も良かったが(3階では3作家の絵本を読むスペースもあり、マイナーに分類されるであろう昆虫の生涯を緻密な描写と正確な文章で綴った舘野氏の「しでむし」「つちはんみょう」「ぎふちょう」は完読してしまった)、山形ビエンナーレ2016で見たミロコ氏の大型立体絵本〈あっちの目、こっちの目〉が1台展示されていて、それが良かった。
この作品は、山形市の動物のそばに暮らす人たちから動物を目撃したエピソードを集め、それを昔話風な短い物語にして、ミロコ氏が絵を描いたものだ。その絵が、荷馬車風の立体物に描かれていて、荷が入るような箱の扉も開いてその中に描かれている物語も読む構造になっている。展示されていた1台は、うさぎと鷹の物語で、箱の中には人目線で描いたエピソードの写し鏡【動物目線で見た物語】が描かれている。
3階で、その立体物が絵本化された本も読んだが、総じて人間は動物から見たら命を脅かすものであった。けれど、きっと本物の動物もそうなのだと思うが、人に対して怯えて暮らしているわけではなく、彼らはひょうひょうと暮らしている。そしてまた、動物から見た山形の人々は、どこか動物的だった。
太田市美術館・図書館で学芸員だった小金沢智さんにお声がけいただき、現在彼が中心となって準備を進めている山形ビエンナーレ2024の講座講師の一人を務めさせていただくこととなった。何度か山形に足を運ぶことになるので、いろいろな動物にも会えるに違いない。