5978声 コチュジャン

2024年10月19日

この日は、アーツ前橋「表現の森」(アーティストが前橋市内の各地へ赴きその場の人たちと協働する活動)からの流れである、中島佑太のWS撮影(現在はアーツ主催ではなく、企業からの協賛により活動をしている)。もう何度通ったか覚えていないくらいになった群馬朝鮮初中級学校を訪れた。

ハロウィンが近いということで、それにちなんだような絵本の読み聞かせが行われていた。ハングル語は未だに読み聞き全くわからないが小さな子どもたちは聞いたり聞かないではしゃいだりしていた。WSの内容は、段ボールを使って公園を作ってみようという提案。提案、と書いたのは必ずしもそうしなさいね、各自作ったものは展示してなぜ作ったか発表もしてみましょうね、というような押しつけが一切ないからだ。それはずっと変わらない中島佑太の作家性でもある。

傑作だったのは、段ボールを組み合わせて、Uの字の便座も貼り付けて、トイレを作った子がいた。それに向かって、青いテープ紐のようなものをズボンに押し当てた子がいた。公開疑似立ちションである。その発想の連鎖と自由性。素晴らしい。

学校の窓口になってくれている里香さんから、お昼に出されためちゃくちゃ美味いスープと、特製のコチュジャン、婦人会で作っているオンマの味という甘じょっぱい調味料をいただいた。そのコチュジャン、人生が変わってしまうようなコチュジャンであった。辛さではなく、うま味の玉手箱。つまようじでそれだけをちびちびつまみながらずっと酒が飲める。

以前、日本にある朝鮮学校が、その経営をすべて自分で行っていると聞き、よく考えると国や県はそういう態度かもなと思う一方で、ひどい話だとも思った。けれど、関係してみて感じるのは悲感ではなく、この学校やそれを支える家族の方たちの強さ、豊かさである。

WSで使われた段ボールは、そのまま校舎裏の置き場に貯められ、その回収資金が学校の運営に回される。そこまで計算しての中島佑太のWSなのだが、緩く、でも確かな関係性がここにはある。