6419声 楽しいバトン

2026年01月03日

アートディレクター・カメラマンの田淵章三さんが亡くなった。商業写真の第一線で働き、詩人の谷川俊太郎さんとも「子どもたちの遺言」「今日までそして明日から」という2冊の写真詩集を刊行。北軽井沢に居を移してからは、山まわりをまるっと仕事にしている会社、きたもっくのブランディングにも携わってきた。

僕は、長野原町がやんばダムの完成映像を作る際に、フリーペーパーきたかるのチームに混ざる形でその仕事に加わった。そのチームにいたのが、きたもっく代表の福嶋誠さんであり、田淵章三さんであった。クセの強いおじさんたちという第一印象であったが、すぐに彼らの仕事の深さを知り、映像制作にあたっては章三さんがディレクター、僕がカメラマンという役回りで仕事を進めた。シリアスになりがちなダムを巡る取材において、章三さんの提案は常にユニークで、ご自宅にも何度も泊まらせていただきながら(章三さんが好んでいた、醤油と砂糖だけで煮る格別に美味しくて格別に体に悪そうなすき焼きもごちそうになりながら)映像を完成させた。その仕事だけに限らず、公私に渡って大変お世話になった。僕は章三さんのことがとても好きだったし、章三さんも僕が行く度に「お前の顔は面白い!」と笑い、写真に限らない表現方法に関しても自身が知っていることは何一つ隠さず教えてくれた。言うのは勝手だから言うと、師匠だと思っていた。

本日、家族葬であったのに、娘の三菜さんが僕も行って良いと言ってくれたので、参列させていただいた。同席された誠さんが言っていたように僕も全くをもって気持ちの整理はつかないのだが、章三さんから色々を教わった身として(実際仕事として教わったことは多くはないが、それ以外の生き方や人間の在り方などを学んだ)これまた勝手に重いバトンを受け取った気でいたのだが、厳かな式の最中にも所々に章三さんのユニークさを思い出させるやり取りがあり、僕も、楽しいバトンを受け取ったのだと思い直した。章三さん、ありがとうございました。