「しゅるしゅるしゅる」
脳内に刺し込む激痛の為、目を閉じてしまっていたので、
その全貌は分からないが、およそ、3、40cm位はあったのではないかと思われる。
私の鼻から引き抜いた、ガーゼが、である。
鼻の骨を真っ直ぐにする処置を受けて以来、
私の鼻の中には、長いガーゼが詰まっていたらしい。
らしい、と言うのは、処置を受けている際、
私は全身麻酔で寝ていたので、その現場を見ていなかった。
これによって、完全に鼻呼吸は断たれ、四六時中、
口を半開きにしておらねばならぬ生活を、余儀なくされた。
味覚の鈍化と、頭痛と耳鳴りも、おまけとして付いてきた。
その元凶と思われるガーゼを、今日、病院で抜いてきたのである。
「万国旗か」
と、つっこみたくなるほど、長いガーゼであった。
抜いた瞬間は、痛みも有るが、鼻血が勢い良く、垂れ落ちた。
その黒ずんだ色を見るに、鼻の中で溜まっていた血が、出て来たらしい。
あまり、バイオレンスな描写を書いていると、読者も気分を害してしまうであろう。
そして、これから、鼻骨骨折の処置を受ける患者諸氏に、
無用な恐怖を与えてもいけないので、これくらいに留める。
激痛など、ほんのわずかな時間なので、おそるるに足らず。
それよりも、鼻呼吸の爽快感を味わえる喜びの方が、大きい。
「鼻の固定具は付けておいて下さい」
と、形成外科の先生から言われたものの、病院を出る頃には外して、
鞄の奥底にしまっていた。
「さて、何を食おうか」
まずは、それである。
ジョッキの麦酒をゴクゴクと、飲みたい。
つぎは、それである。
【天候】
終日、薄曇りの穏やかな日。