解禁。
と言うほどでもないが、半月前の鼻の骨を折った日から、
断酒していた酒を、飲んだ。
とりあえず、生麦酒から飲んでみた。
およそ半月も酒を遠ざけていたので、
さぞや至高の喉越しとなるだろうと、淡い期待を一口目に寄せていた。
「ゴクリ」と、まず、一口。
クリーミーな泡を上唇に感じつつ、舌先を滑って、
ホップの爽やかな香りと共に、麦酒が喉に駆け込んで来る。
「意外と薄い」
味も、喜びも、である。
どう言う訳か、紛れもなく、よく飲んでいる銘柄の国産生麦酒なのに、
随分と、薄く感じる。
そして、胸中を満たすであろう満足感が、胸の三分目で、止まっている。
どうしたことか、腑に落ちぬ感慨を抱きつつ、二口、三口。
いまはまだ、二杯目から三杯目に移行する、極初期の段階である。
その段階において、したたかなる酔いを、感じている。
普段、そんなに弱くはないし、体調もすこぶる良いので、意外に感じた。
やはり、半月の断酒によって、肝機能の働きが低下してしまったのであろうか。
鼻血が大量に出た事によって、アセトアルデヒド脱水素酵素が、
不足してしまったのであろうか。
其処から無理をせず、自らの体の声に耳を傾けつつ、店を辞した。
夜風が撫でる鼻の中央部が、いささかジンジンと熱を帯びている、感覚。
それは、果たして、アルコールによるものなのか。
先程、おしぼりで顔を拭いた時に、グリッ、と指が当たった衝撃によるものなのか。
確かではない。
只、現時点においての確かな実感は、この、心地好いアルコールの酔い。
その浮遊感の裏側にある、復活の手ごたえ、である。
【天候】
曇りのち晴れ。
午後より、やや風強し。