いま、隣の人から廻って来たお猪口。
中に入っているのは、日本酒。
ではなくて、醤油。
そこに人差し指を突っ込んで、指ごと、醤油を舐める。
そして、日本酒が入っているお猪口を、口に運ぶ。
つまり、醤油を肴に呑んでいるのである。
「醤油ナイト」
と言う催しが、昨晩、ほのじで開催された。
読んで字の如く、「醤油」づくしの、一晩を過ごそう。
と言う、至極、単純明快な集まりである。
プレゼンターとしていらしたのは、「職人醤油」社長の高橋万太郎氏。
始まってまず、日本列島津々浦々で醸造されている、職人仕立ての醤油を、
それに合う、様々な料理で味わう。
バイキング形式の机の上には、あくまで、「醤油に合う」。
と言う視点で、醤油を主役に抜擢した、料理の数々が並んでいる。
一つ一つ、キャラクターの違う醤油。
「アボカドには、これ」
「刺身にはこれで、卵かけご飯には、これ」
と言う風に、楽しみ方は千差万別。
スーパーで貰える、無料の刺身醤油が美味い。
と思っているような、鈍感な、いや、おおらかな味覚を持つ私でも、
各醤油の味の機微に、驚いた。
小林頼司君の、アコースティックな演奏が終わる頃には、
私の周辺の一部、すでに、心地好く酔っていた。
それは、彼の歌が、醤油に合っていた、と言う事が大きく起因している。
つまみに醤油、カレーに醤油、シフォンケーキに醤油、飛び交う話も醤油。
しょっぱい奴らが、更に、しょっぱくなって行く。
夜も更けて、最終的に、お猪口に様々な醤油を入れて、廻し飲み。
ならぬ、廻し舐め。
醤油の色は夜の色。
お猪口の中で鈍く光っている醤油は、
妖しげな夜の色をしていた。
「この醤油はなんですか」
なんて、食事をした際に、思わず聞きたくなってしまうような、
いま、そんな心持でいる。
【天候】
朝から薄曇り。
午後から風、雨。