1274声 会いたい風景

2011年06月27日

週末は、紫陽花を見に行った。
近所の公園へ見に行く。
と言う、手軽な方法で無くて、
電車に乗って、東京の名所まで見に行った。

飛鳥山。
と言えば、江戸時代からランキングの上位を守ってきた、
知る人ぞ知る、桜の名所である。
公園として整備された現代の飛鳥山では、
桜と双璧をなすのが、紫陽花である。
毎年、この梅雨の時期になると、紫陽花見物客で、園内は賑わう。
特に、飛鳥山の麓にある、「飛鳥の小径」と言う、線路脇の細い道。
山肌に紫陽花が連なり、梅雨の一日を彩っている。

一眼レフを肩から下げた人たちに交じりつつ、
王子駅を降りて、直ぐ裏の飛鳥山公園へと入る。
「さくら新道」と言う、スナック長屋(スナックが沢山入店している長屋)を抜けて、
小径に入ると言うのも、オツである。
紫陽花を眺めながら、句帳に句を認めていると、背中に感じる視線。
振り向けば、こちらに向いている、一眼レフが三機。
早々に立ち退いて、飛鳥山の上へと登る。

飛鳥山からは王子の街が一望できる。
頂上は公園になっていて、砂場の横で、
遠足の子供たちがお弁当を広げている。
その周りを、飛び跳ねている子供、茶屋で焼きそばを食べている家族。
駅のホームに京浜東北線の青い電車が入線して、また出て行く。
湧き出しては流れて行く、人波。
いまにも降り出しそうな梅雨空の下に在る、この街は、私がかつて住んでいた街。
「会いに来たかったんだ」
と思った。
この、風景に。

【天候】
終日、梅雨らしい曇天。
蒸し暑いが、暑さ苛烈ではない。