梅雨明けした今日は、熊谷市街地の路上をほっつき歩いていた。
炎天のアスファルト上は、近年市が推している事業のキャッチコピー「あついぞ!熊谷」、
まさにその通りであった。
市内に三軒残っている銭湯の中、二軒には訪れた。
今日は、最後の一軒である、「朝日湯」を目指す。
道は覚えた。
何度も通っているから、であるが、銭湯を目指して街中を歩くのは面白い。
ここ何年か、靴底を減らして見て、そう感じている。
銭湯は大抵旧市街地にあるので、その街の裏通りを歩く事になる。
湯に浸かり、常連さんや番台の方と会話す事で、
徐々にその街の、個性やしきたりが、見えて来る。
知らない街、今回は熊谷の街が、少しづつ分かって来た。
駅を出て、こっちの方は商店街、こっちの方は飲み屋街。
「八木橋」と言う、地元で絶大な支持を得ている百貨店の存在や、
七月後半には、「うちわ祭り」が開催されるとか。
その街の「生活」を知ると、親近感が芽生える。
昭和15年に開業した朝日湯は、破風を構える趣深い銭湯であった。
内装も大幅な改修が為されていない為、古風な良い雰囲気である。
湯船に浸かろうとすると、湯船の中にいるおじいちゃんに声をかけられた。
「65くらいかい」
勿論、年齢でなく体重の事だと察し、
「はい、まさに65kgくらいです」
と、答えると、おじいちゃん。
ほくそ笑みながら、声も無く何度も頷いておられた。
湯上がりに、番台のおばちゃんと雑談していると、
さっきのおじいちゃんが、暖簾をくぐって来た。
「あら、忘れ物」
おばちゃんが言うと、おじいちゃんは曖昧に頷いて、脱衣籠をごそごそやっている。
私は、畳の上に落ちている眼鏡に気付き、
「これですか」
と言うと、また、おじいちゃん。
今度は恥ずかしそうに笑みを浮かべて、何度も頷きながら、
眼鏡をかけて出て行った。
「国道渡る時、気を付けてくださいね」
おばちゃんが、おそらくいつもの調子で、おじちゃんの背中に声をかけた。
汗を拭いつつ、帰路の道を行く。
これで熊谷市の銭湯は全て回ったので、また、次の街へ行くだろう。
しばし、熊谷市とお別れと言う訳である。
知らない街の生活の中に入り、何かを発見し、また別の街へと行く。
何だか、探偵小説のような筋書きであるが、私の場合それが銭湯なので、
随分と庶民的な探偵になってしまう。
さて、次の街ではどんな発見があるだろうか。
【天候】
本日、関東甲信越地方は梅雨明け。
まだ、蒸し暑い梅雨空。
夕方から夜にかけて、ゲリラ雷雨、何度か。