1286声 生活から生活へ

2011年07月09日

梅雨明けした今日は、熊谷市街地の路上をほっつき歩いていた。
炎天のアスファルト上は、近年市が推している事業のキャッチコピー「あついぞ!熊谷」、
まさにその通りであった。
市内に三軒残っている銭湯の中、二軒には訪れた。
今日は、最後の一軒である、「朝日湯」を目指す。

道は覚えた。
何度も通っているから、であるが、銭湯を目指して街中を歩くのは面白い。
ここ何年か、靴底を減らして見て、そう感じている。
銭湯は大抵旧市街地にあるので、その街の裏通りを歩く事になる。
湯に浸かり、常連さんや番台の方と会話す事で、
徐々にその街の、個性やしきたりが、見えて来る。

知らない街、今回は熊谷の街が、少しづつ分かって来た。
駅を出て、こっちの方は商店街、こっちの方は飲み屋街。
「八木橋」と言う、地元で絶大な支持を得ている百貨店の存在や、
七月後半には、「うちわ祭り」が開催されるとか。
その街の「生活」を知ると、親近感が芽生える。

昭和15年に開業した朝日湯は、破風を構える趣深い銭湯であった。
内装も大幅な改修が為されていない為、古風な良い雰囲気である。
湯船に浸かろうとすると、湯船の中にいるおじいちゃんに声をかけられた。
「65くらいかい」
勿論、年齢でなく体重の事だと察し、
「はい、まさに65kgくらいです」
と、答えると、おじいちゃん。
ほくそ笑みながら、声も無く何度も頷いておられた。

湯上がりに、番台のおばちゃんと雑談していると、
さっきのおじいちゃんが、暖簾をくぐって来た。
「あら、忘れ物」
おばちゃんが言うと、おじいちゃんは曖昧に頷いて、脱衣籠をごそごそやっている。
私は、畳の上に落ちている眼鏡に気付き、
「これですか」
と言うと、また、おじいちゃん。
今度は恥ずかしそうに笑みを浮かべて、何度も頷きながら、
眼鏡をかけて出て行った。
「国道渡る時、気を付けてくださいね」
おばちゃんが、おそらくいつもの調子で、おじちゃんの背中に声をかけた。

汗を拭いつつ、帰路の道を行く。
これで熊谷市の銭湯は全て回ったので、また、次の街へ行くだろう。
しばし、熊谷市とお別れと言う訳である。
知らない街の生活の中に入り、何かを発見し、また別の街へと行く。
何だか、探偵小説のような筋書きであるが、私の場合それが銭湯なので、
随分と庶民的な探偵になってしまう。
さて、次の街ではどんな発見があるだろうか。

【天候】
本日、関東甲信越地方は梅雨明け。
まだ、蒸し暑い梅雨空。
夕方から夜にかけて、ゲリラ雷雨、何度か。