1291声 落語と利き酒と

2011年07月14日

「利き酒大会と寄席」
と言う、粋な集まりに伺ったのは、昨晩である。
主催は、榛名山の麓の町にある焼肉屋のご主人。
店に入ると、ペンと用紙を渡されて、「さぁ」と、御猪口をひとつ。
それを片手に、奥へ進むと、人だかりの机の上に、銘柄の分からぬ十本の酒瓶。
つまりは、こう。
右の五本と左の五本を、神経衰弱の如く、一致させれば良い。

「利き酒」
自分で本腰を入れてやるのは、日本酒では初めてに近い。
端から順に、御猪口に入れて飲み進めて行く。
「違う」
と言う事は分かるが、味の形容が出来ない。
考えた挙句、何故か、「南京豆」とだけ、用紙に記した。
南京豆の様な風味を感じたので、右3番目の酒は南京豆と書いておけば、
左の酒を飲んだ時に分かり易いと思った。
「思った」
のだが、どう言う訳か、左の五つの酒瓶には、2つも南京豆がある。
すなわち、私の舌が馬鹿になってしまったのだろう。
つくづく、自らの味覚が頼りない。

「分かりますか」
と、私が聞いたのは、隣で御猪口を傾けているほのじ氏である。
先程から、「利き酒」の量を通り越して、
御猪口になみなみ注いで飲んでいるので、もはや試合を投げだして、
飲んだくれているのだと思った。
「銘柄まで分かるよ」
と、この答えがギャグにならなかったのは、後の発表の時に、
五銘柄全問正解で、主催者からほのじ氏の名前が発表されたからである。
参加者およそ二十五名中、全問正解者は三名。
私は、五問中二問正解と言う、なんともおぼろげな出来具合。

さて、利き酒も済んだところで、いよいよ三遊亭時松さんの登場。
演目は「短命」。
核心部分を省略する事で、深い味わいを生む。
川柳や俳句などに顕著に見られる、古来から伝わる、粋な手法である。
などと、私の下手な解説つきでは、野暮になってしまう。
ちょいと一杯ひっかけながら聴くには、最高の古典である。
その芸、流石であった。

「銭湯好き」
それも筋金入りで、入っている筋が良い。
時松さんが、である。
紹介して頂いた、やまたけさんに感謝しつつ、焼肉でまた日本酒を一杯。
冷酒を飲みつつ、中でも「水風呂」が特に好きだと言う、
時松さんの言葉を思い出していた。

【天候】
終日、夏日。
炎暑、甚だし。
※15日記