「利き酒大会と寄席」
と言う、粋な集まりに伺ったのは、昨晩である。
主催は、榛名山の麓の町にある焼肉屋のご主人。
店に入ると、ペンと用紙を渡されて、「さぁ」と、御猪口をひとつ。
それを片手に、奥へ進むと、人だかりの机の上に、銘柄の分からぬ十本の酒瓶。
つまりは、こう。
右の五本と左の五本を、神経衰弱の如く、一致させれば良い。
「利き酒」
自分で本腰を入れてやるのは、日本酒では初めてに近い。
端から順に、御猪口に入れて飲み進めて行く。
「違う」
と言う事は分かるが、味の形容が出来ない。
考えた挙句、何故か、「南京豆」とだけ、用紙に記した。
南京豆の様な風味を感じたので、右3番目の酒は南京豆と書いておけば、
左の酒を飲んだ時に分かり易いと思った。
「思った」
のだが、どう言う訳か、左の五つの酒瓶には、2つも南京豆がある。
すなわち、私の舌が馬鹿になってしまったのだろう。
つくづく、自らの味覚が頼りない。
「分かりますか」
と、私が聞いたのは、隣で御猪口を傾けているほのじ氏である。
先程から、「利き酒」の量を通り越して、
御猪口になみなみ注いで飲んでいるので、もはや試合を投げだして、
飲んだくれているのだと思った。
「銘柄まで分かるよ」
と、この答えがギャグにならなかったのは、後の発表の時に、
五銘柄全問正解で、主催者からほのじ氏の名前が発表されたからである。
参加者およそ二十五名中、全問正解者は三名。
私は、五問中二問正解と言う、なんともおぼろげな出来具合。
さて、利き酒も済んだところで、いよいよ三遊亭時松さんの登場。
演目は「短命」。
核心部分を省略する事で、深い味わいを生む。
川柳や俳句などに顕著に見られる、古来から伝わる、粋な手法である。
などと、私の下手な解説つきでは、野暮になってしまう。
ちょいと一杯ひっかけながら聴くには、最高の古典である。
その芸、流石であった。
「銭湯好き」
それも筋金入りで、入っている筋が良い。
時松さんが、である。
紹介して頂いた、やまたけさんに感謝しつつ、焼肉でまた日本酒を一杯。
冷酒を飲みつつ、中でも「水風呂」が特に好きだと言う、
時松さんの言葉を思い出していた。
【天候】
終日、夏日。
炎暑、甚だし。
※15日記