寝ぼけ眼でハンドルを握っていた。
朝靄の湖畔には、新涼と呼べる、空気の清々しさがあった。
「一睡もできなかった」と、充血の涙目をこすっている参加者もあったが、
予定にあるように、湖畔に咲く夕菅を見に行く。
車を駐車場に停め、朝の空気を胸一杯に吸い込んで、歩く。
花野には、淡い青空の下、朝日に輝く夕菅の花が咲き競っていた。
木道を歩きながら、句帳片手に吟行。
花野は、蜻蛉、邯鄲、朝露や、秋の山、空、雲、風、など季題の宝庫であった。
小一時間吟行し、ホテルに戻り、朝食後に句会。
朝食の際、隣のテーブルに座っていたのは、
私たちの一向とは別の、俳句仲間である女性。
彼女は遊びらしいが、俳句をやる人間同士、遊び行く先の趣向も似て来るのだろか。
その後、ホテルをチェックアウトし、下山。
今度は赤城山の麓である渋川市内で、滝を見ながら、周辺の沢を吟行。
残念ながら、先の地震の影響だろうか、落石甚だしく、
肝心の滝の近くまでは行けなかった。
榛名湖畔とは違い、蝉時雨のとても暑い日和である。
皆、だらだらと汗を流しながら、歩を進めて行く。
その後、先生宅へ行き、直ぐ句会。
やはり句も、榛名湖畔の新涼を懐かしむものが多く見られた。
句会が終われば、直ぐ次の句会の為に句作する、と言う形式。
先生宅の庭やら裏の野原やらを歩いて、吟行する者もあれば、
ソーダ水を飲みながら、扇風機の前で句作する者も有り、様々。
一睡も出来なかった仲間は、即行で作って横になって昼寝していた。
また句会が終わって、さて、次の句会で最後。
全て、句を出し切って、頭の中の全ての創造力が枯渇した所で、ようやく合宿終了。
もう、外は夕暮れ時になっていた。
東京から参加されている方は、列車の時間となり、慌ただしくさよなら。
いつもこの合宿では、群馬以外の俳人の方と会えるので、新鮮である。
富山の薬売りを待つ気持ち、ではないが、土地土地の俳句事情、
取り分け、東京の俳句事情の事を聞くのは、楽しい。
青山墓地や明治神宮が、いつもの主な吟行場所。
と言う話を聞くだけで、都会的な雰囲気に憧れてしまう。
若い俳人が多く、句会の参加者も断トツに多いのも、東京ならでは。
「おいでよ」
そう言ってもらうが、無精をして、まだ一度も東京の句会に行かれないでいる。
帰路。
実り始めている稲穂の揺れる、夕闇の里山風景の中、遠く見える街の方から、
小さな花火が開くのが見えた。
【天候】
終日、酷暑。