「ほっ」
と、胸を撫で下ろしたのは、差し出された伝票の金額が、
想像の範疇を出ていなかったから。
それでも、寂しい懐から出すのは、とても辛い額。
酒場のレジでは、いつもこの思いを味わっているが、今回は酒場ではなく、
カーディーラー、なのである。
最近、車で頻繁に失敗をしている。
自転車を含めれば、電柱に激突して怪我をしたり、
先月は、出掛けた先でバッテリーが上がってしまった。
そして今回は、左のドアミラーを割ってしまったのである。
そこは、見知らぬ土地の、駅前通りから続く、細い路地だった。
雨が降っており、待ち合わせの時間もあったので、気が急いていた。
すれ違う対向車の強いライトの輝きが、一瞬視界を奪って行く。
すれ違って、走る。
すれ違って、走る。
すれ違って、「ゴチッ」。
何かを裂くような音。
その方向へ視線を移すと、街の灯を反射させる左のドアミラーが見えた。
屈折しているその光の角度は、明らかに、割れていると思われた。
バックミラーで確認すると、過ぎ去る夜景には、車道へ出しゃばった、
電柱の影が一本見えた。
車を停めて確認すると、やはり、ミラーの鏡面に亀裂が入っており、破損していた。
運転席へ戻って、ボタンを押して見ると、電動格納装置は作動しているので、
故障はしていない模様。
一瞬にして気を腐らせて帰り、一夜明けた今日、車を購入したカーディーラへ行って来た。
整備士の方によると、部品交換で修復は可能との事。
直ぐ様、部品の取り寄せだとか、金額の支払いだとか、
諸手続きを済ませ、店舗を後にした。
車輪の付いた乗り物とは、今年、ことに相性が悪い。
つまりは、「碌な事がない」のである。
来年の初詣では、交通安全のお守りを買おうと思っている。
【天候】
台風は去ったが、依然としてその余波は残っている。
終日、断続的な雨。