確実は、町や里山、各地で運動会が開催されていた。
小学校には万国旗が張りめぐらされ、大勢の人たちで活気づいていた。
ひとつの小学校の裏を通った際、露店のかき氷屋が出ていて、
子供たちで盛況だった。
9月半ばとは言え、まだまだ、かき氷がよく売れる。
そんなどこか懐かしい運動会の光景を、頬杖ついて思い浮かべている私は、部屋の中。
窓の向こうには、青空と千切れ雲。
絶好の行楽日和だが、不健康にも終日、家の中に居る。
徐々に紅葉が始まって来ている山の方へ、行きたい。
例えば、JR吾妻線にでも揺られて、吾妻渓谷や川原湯温泉など、美しい時期だろう。
そんな旅情を思う浮かべていると、机の下に置いてある、古びた紙包が目に入った。
表紙には「ねずみのハイキング」と、黒マジックで書かれている。
紙包みの中身は、古い絵本で、随分と昔の事なので、どう言った経緯で、
この絵本を手にしたかは定かでないが、兎も角も、自分で買った品である。
一回くらい実演したか、どうか、それも定かではない。
ハイキングに行かれないので、せめて、ねずみのハイキングの物語でも読もう。
ざっと読んで、作品のこうである。
ハイキング日和に出掛けたネズミは、天敵であるネコに遭遇してしまう。
ネコ追いかけられるネズミは、道中でブルドッグに出遭い、
今度はネコが、そのブルドッグに追いかけられる羽目に。
逃げて行くネコの前にヒョウが現れ、ブルドッグがヒョウに追いかけられる。
ヒョウがブルドッグを追いかけていると、向こうの山が動き出す。
それは山でなく、ゾウだった。
これにはヒョウも参って、一目散に逃げ出してしまう。
なんとか、重なる偶然によって難を逃れたネズミは、ゾウの背中で一息つく。
すると、寝ていたゾウはネズミの走る音で、ろくろく眠れなくなってしまう。
そこで、ゾウの鼻先まで降りて来たネズミが、言うのである。
「えっへん、わがはいは、動物の王さまであるぞ」
そして次の日、ゾウの鼻先に乗っかって、大威張りで、ネズミは望み通りに、
ハイキングに出掛ける事ができました。
チャンチャン。
紙芝居の裏の解説に、「弱肉強食の人間社会を風刺し、」だとか、
「官憲に抵抗する力をなに一つ持たなかった自由主義者が、」なんて書いているので、
大人は、ネズミが象徴するもの、を考えてしまうであろう。
ネズミがずる賢い気が、しないでもない。
道中で、ネコとブルドッグとヒョウも、この日のハイキングに誘ってあげて欲しい。
そう思った。
【天候】
秋晴れで、残暑厳しい一日。