台風が去って、野の風物が澄んでいる様な、透明な空気を感じる。
暑さ寒さも彼岸までと言うが、定石通り。
これから、これでつるべ落とし式に、秋も深まって行くのだろう。
今日もある人に、ぼたもちとおはぎの違いを、得意げに説明されたが、
知らん顔で聞いている振りをしていた。
「春に咲く牡丹の時期はぼたもちで、秋に咲く萩の時期はおはぎ」
毎年、どこかで耳にする話なので、当然ながら知っている。
しかし、近年では、一年中「おはぎ」として販売している品物もあるので、
それを知らないも増えてきているのであろう。
かく言う私も、春の小豆は皮がかたく、その皮を除いてこしあんにし、
秋には新豆が採れるので、やわらかい皮のままつぶして、粒あんにする。
と言う、時期の小豆状態に合わせ、そのあんを作り分けている事までは知らなかった。
そう言う生活の繊細な機微が、日本人が受け継ぐべき文化だと思う。
従って、私におはぎとぼたもちの違いを得意げに説明した方は、文化の伝道者なので、えらい。
そう言えば先日。
ほのじで店主と、「世界の地麦酒飲み比べ」と言うのをやった。
市場のような場所で、10種類くらい世界の地ビールを仕入れて来ていた。
机の上に並べて、一本づつ、飲み比べて行く。
ピルスナーにペールエール、ヴァイツェンにスタウト。
主に、ヨーロッパの麦酒が多く、店主と私、
共に行った事の無いヨーロッパに、思いを馳せていた。
「ホップの苦みを抑えた、モルトの香りと旨みを感じますか」
などと、酔いも手伝って、快調に講釈を垂れてゆく私。
メモをとっている店主を眺めつつ、もう一口。
この日は飲み比べなので、これも許されるが、
巷の酒場で私と一緒の席に着いた方は、さぞや不快だろうなと、思った。
「ぼたもちとおはぎの違い」
のように、私にも、
「ラガーとエールの違い」
を人に話す時は、注意せねばと思った。
秋も深まるこれからは、麦酒の時期であるから。
【天候】
終日、台風一過の秋晴れ。