1369声 虫の闇

2011年09月30日

携帯電話に見慣れぬ着信履歴があって、かけ直した。
名乗って、要件を聞くと、
「おめでとうございます、奨励賞です」
と、電話口の向こうの御仁がおっしゃる。

賞の名を聞くと、記憶の糸がすぐに結ばれた。
応募していた、俳句の新人賞、であった。
「うれしい」
と言う事よりも、「正賞ではない」と言う事実の方が、
胸中で強い波紋になっていた。
波紋が静まってから、奨励してもらえただけでも、
良かったと言う気持ちが、漣のようにやって来た。

以前から、一句会を終えるごと、あるいは一句集読み終えるごとに、
「やれやれ」
と言う心持がする。
それは、疲労による嘆息ではなく、湧いてくる希望的薄笑い、なのである。
句会で面白い句に出遭ったり、句集で巧みな句を見つけたりした時に、
「やれやれ、どうやら、まだまだ先は長いようである」
と思ってしまう。
俳句の道を進めば進むほど、今宵のこの虫の闇の如く、
先にある広大な夜の深さを、思い知る。
そんな自らの句業の前途を思うと、自然と薄笑いが込み上がって来る。
そして、今宵もやはり、「やれやれ」と思っている。

【天候】
朝より曇り、気温は日中28℃と高め。
夕方より、一時的に雨。