1382声 隣近所

2011年10月13日

おそらく、無名である。
地域の輪の中では名が通っていても、世間ではほとんど無名と言えよう。
それなので、本棚にあって、格安で投げ売り同然に売られていた。

そう言う本を古本屋見つけ出しては、買っている。
ここ数年は、「俳句集」などが多い。
自費出版した私家版の句集や、無名の作家の句集となると、
「俳句」と言うジャンルと相まって、すこぶる価格が安い。
消費者としては有り難いが、手にとって、いささかさびしい心持もする。

今日、一冊購入してきた俳句集も、昭和末期に東京の出版社から、
シリーズ物で刊行された句集のひとつ。
著者は群馬県出身だが、ほとんど無名と言える作家で、私も今日初めて知った。
奥付に記載してある著者の生年月日を見ると、昭和一桁生まれ。
御存命なら御高齢だろうが、私に知る由も無く、俳友の周辺情報でも聞いた事が無い。

読み進めてゆくと、これが良いのである。
新進作家特有の才能の鋭さ、有名な大家の洗練された技巧。
そんな「華」こそ無いが、主婦と言う視点から感じ取った自然を、
素直な詩心で五七五にまとめている。
そして、生活と俳句に、どっしりと腰を据えて挑んでいる。
例えば、隣近所に住む、ごく普通のおばちゃん或いはおじちゃんが、
堂々たる句風の俳句作家なのである。
やはり、日本人とは、そういう民族なのであろうか。
「すごい事だなぁ」と、しみじみ感じた。

【天候】
穏やかな秋日和。
月光が一段と清かになってきた。