1395声 棗の実

2011年10月26日

句会の折、句が描かれた短冊が回ってきて、「棗」と言う漢字が書かれていた。
その時、「なつめ」とは読めた。
そう言う名のお店が高崎市内にあるし、
ほのじ氏がやっていた店の名が、「なつめ」だからである。
秋の季語になっているが、「棗」と言う木、及び「棗の実」と言う物の実物が、
思い浮かばなかった。
おそらく、佳句だった記憶があるが、俳句初学である自分の浅はかな知識故、
その句は採れなかった。

それが今日、である。
俳句の仲間の方から、棗の実を頂いた。
そのまま食べられると言うので、姫林檎に似たウズラの卵ほどの実を、
三粒ほど齧って食べた。
美味くは無かった。
皮が硬く水気が無いので、舌触りが悪い。
林檎の系統の爽やかな香りがあるのが、せめてもの救いであった。

昔は里山のあちらこちらにあったらしいが、どうも高度経済成長が進むにつれ、
どんどん数を減らして行ったらしい。
私も、意識して実っている棗を見たのは、先日、
高崎市の「染料植物園」へ吟行に訪れた時である。
古くから、染料として用いられており、茶系統の色を出すとの事。

果物にも流行り廃りがあるようで、棗の実を食べる事など、
私が俳句でもやっていなかったら、おそらく無いであろう。
一年中、世界各国の果物が食べられる現代社会に於いて、
そして、益々その便利になって行く生活の中で、「季語」はどう働いて行くのか。
小さな実ひとつ齧りながら、ぼんやりと、考えさせられた。

【天候】
終日、風強いが秋晴れ。