自宅の前に、一つ道を隔てて、空き地がある。
以前は建築関係の会社が資材置き場に使っていたのだが、
その会社もこの土地から退いてからは、手付かずに雑草が生い茂っている。
以前の会社が、フェンスを張りめぐらせたので、雑草が道に被さって来る事は無いが、
フェンスの中は、「草の海」と言った具合になっている。
地面とフェンスの隙間から猫が入って行くと、
直ぐにその姿が見えなくなってしまうくらいである。
草が生い茂っていても、別にどうと言う事は無い。
これからの空っ風の季節は、むしろ砂埃がたたなくて良いのだが、少し前は虫で苦労した。
その虫は、おそらくカメムシなのだが、天道虫くらいの大きさで全体が茶色い。
こいつ等がこの秋に大量発生して、玄関やベランダに大量にくっついていたり、
あるいは死んでいたり。
天気の好い日に、真っ白いシーツなど干そうものなら、墨汁を飛び散らしたように、
点々とくっついている。
カメムシ特有の臭いを発するので、やたらに掃えず、厄介なのである。
それも近頃、立冬を過ぎてからようやく落ち着いて来たので、一安心している。
私の推測では、この虫の大量発生の所以は、草の海に大量に生えている、
背高泡立草にあると考えている。
それがこいつ等の寝床になっているのではなかろうか。
この草の海に、どこから種がこぼれて来たのか、最近、菊が咲き始めた。
和歌の世界で、たんに「菊」と言えば白菊の事だが、白い花はあまりなく、
黄色や紅色や桃色など、多彩な色の菊が咲いている。
虫柱立ちゐて幽か菊の上 高浜虚子
虚子の句にあるように、あまねく夕日が満ちた草の海の中、
菊の上に、幽かな虫柱が立って揺れている光景は、荘厳な印象を受ける。
菊には、そう言う不思議な存在感がある。
【天候】
終日、冬晴れ。