1410声 菊日和

2011年11月10日

自宅の前に、一つ道を隔てて、空き地がある。
以前は建築関係の会社が資材置き場に使っていたのだが、
その会社もこの土地から退いてからは、手付かずに雑草が生い茂っている。
以前の会社が、フェンスを張りめぐらせたので、雑草が道に被さって来る事は無いが、
フェンスの中は、「草の海」と言った具合になっている。
地面とフェンスの隙間から猫が入って行くと、
直ぐにその姿が見えなくなってしまうくらいである。

草が生い茂っていても、別にどうと言う事は無い。
これからの空っ風の季節は、むしろ砂埃がたたなくて良いのだが、少し前は虫で苦労した。
その虫は、おそらくカメムシなのだが、天道虫くらいの大きさで全体が茶色い。
こいつ等がこの秋に大量発生して、玄関やベランダに大量にくっついていたり、
あるいは死んでいたり。
天気の好い日に、真っ白いシーツなど干そうものなら、墨汁を飛び散らしたように、
点々とくっついている。
カメムシ特有の臭いを発するので、やたらに掃えず、厄介なのである。
それも近頃、立冬を過ぎてからようやく落ち着いて来たので、一安心している。

私の推測では、この虫の大量発生の所以は、草の海に大量に生えている、
背高泡立草にあると考えている。
それがこいつ等の寝床になっているのではなかろうか。
この草の海に、どこから種がこぼれて来たのか、最近、菊が咲き始めた。
和歌の世界で、たんに「菊」と言えば白菊の事だが、白い花はあまりなく、
黄色や紅色や桃色など、多彩な色の菊が咲いている。

虫柱立ちゐて幽か菊の上   高浜虚子

虚子の句にあるように、あまねく夕日が満ちた草の海の中、
菊の上に、幽かな虫柱が立って揺れている光景は、荘厳な印象を受ける。
菊には、そう言う不思議な存在感がある。

【天候】
終日、冬晴れ。