1413声 紅葉探勝合宿初日

2011年11月13日

「秋の空、ですよねぇ」
まず最初に、聞いてみた。
「どう見ても、冬じゃねぇよなぁ」
その回答を得て、一安心した。
これから一日作る句が、秋か冬か、微妙だったからである。

立冬は過ぎたが、高い空には薄い雲が棚引いており、
薄紅葉の平野部には、まだ秋の気配が濃い。
そんな、秋晴れの空の下、子持山の麓にある先生宅から、
伊香保を経由して榛名湖へ、一泊二日の俳句合宿へ出発した。

運転手は、参加者の中で、たまたま一番大きい車に乗っていた私となり、
自分含め四名の吟行である。
伊香保温泉街へ到着し、まずは紅葉を見に行く。
道中ではや、先生は缶麦酒を空けている。
すれ違うのも困難な人波に紛れて、句を書き留めてゆく。
温泉街の下で、新蕎麦をたぐってから、榛名湖へ登る。

着いてすぐ句会。
そこからはもう、枯野を吟行して句会。
紅葉の湖畔を吟行して句会。
夕食後に題詠で句会。
晩酌後に部屋で酔っ払いつつ作った句が、一番好成績だった。
それが、腑に落ちなかった。
紅葉の写生句を、それこそ散る紅葉の様に、沢山作ったが、
一つとして光る句が無かった。
酔いによって気が紛れたのが、いささか好かったのかもしれない。
そう考えれば、能動的に得た句よりも、受動的に得た句の方が、
確かに結果的に好く出来ていた。
とすると、午前十時から缶麦酒を開けている先生は、緻密な計算の結果。
ではなく、ただ単に、飲みたくて飲んでいるだけであろう。

夜半。
近くに住む、仲間の女流俳人の方が酒を持って来てくれた。
仕事が終わってから、霧の渦巻く榛名湖へ来るとは、頭が下がる。
そして、句会も飲酒もせずに帰って行くと言う、素晴らしい句友である。
その晩は、飲み疲れ、と言うよりも脳が疲れて、
横になると直ぐに体が、蒲団に沈む込んで行った。

【天候】
終日、冬晴れ。