「秋の空、ですよねぇ」
まず最初に、聞いてみた。
「どう見ても、冬じゃねぇよなぁ」
その回答を得て、一安心した。
これから一日作る句が、秋か冬か、微妙だったからである。
立冬は過ぎたが、高い空には薄い雲が棚引いており、
薄紅葉の平野部には、まだ秋の気配が濃い。
そんな、秋晴れの空の下、子持山の麓にある先生宅から、
伊香保を経由して榛名湖へ、一泊二日の俳句合宿へ出発した。
運転手は、参加者の中で、たまたま一番大きい車に乗っていた私となり、
自分含め四名の吟行である。
伊香保温泉街へ到着し、まずは紅葉を見に行く。
道中ではや、先生は缶麦酒を空けている。
すれ違うのも困難な人波に紛れて、句を書き留めてゆく。
温泉街の下で、新蕎麦をたぐってから、榛名湖へ登る。
着いてすぐ句会。
そこからはもう、枯野を吟行して句会。
紅葉の湖畔を吟行して句会。
夕食後に題詠で句会。
晩酌後に部屋で酔っ払いつつ作った句が、一番好成績だった。
それが、腑に落ちなかった。
紅葉の写生句を、それこそ散る紅葉の様に、沢山作ったが、
一つとして光る句が無かった。
酔いによって気が紛れたのが、いささか好かったのかもしれない。
そう考えれば、能動的に得た句よりも、受動的に得た句の方が、
確かに結果的に好く出来ていた。
とすると、午前十時から缶麦酒を開けている先生は、緻密な計算の結果。
ではなく、ただ単に、飲みたくて飲んでいるだけであろう。
夜半。
近くに住む、仲間の女流俳人の方が酒を持って来てくれた。
仕事が終わってから、霧の渦巻く榛名湖へ来るとは、頭が下がる。
そして、句会も飲酒もせずに帰って行くと言う、素晴らしい句友である。
その晩は、飲み疲れ、と言うよりも脳が疲れて、
横になると直ぐに体が、蒲団に沈む込んで行った。
【天候】
終日、冬晴れ。