1447声 寒風と熱湯

2011年12月18日

日が沈むと、いよいよ夜風が痛いくらいに凍てて行く。
こうなると、湯屋までの道のりがとても億劫になってしまう。
「億劫」と言っても、寒風に晒されながら歩く、と言うこともない。
私は郊外に住んでいるので、近隣の湯屋へ行くのにも、車を使う。
それでも、寒い車内に乗り込むには、ちと勇気がいる。

良く行く銭湯へ出掛けた。
「22日はゆず湯」
脱衣場に貼ってあるこのポスターを見ると、しみじみと年の瀬を実感する。
日曜日の夜、深い時間なので空いていた。
空いているので、ゆったりと湯船に浸かって一句ひねろう。
なんて悠長な事は、とてじゃないが、できない。
何故ならば、熱いのである、湯が。

普段もこの銭湯の湯は熱いのだが、冬場は殊に拍車が掛かる。
巷の銭湯はど大方、外気温が寒くなると、当然、湯も冷めるのが早くなってしまうので、
目一杯沸かして熱くする。
普段熱い湯を、さらに熱くなるのである。
それがどれくらいか。
銭湯へ行ったことの無い人には、中々伝わりづらいが、
私が巷でよく熱いと感じる湯に、足湯がある。
爪先を浸けるだけで「あちっ」と、反射的に避けてしまうくらいの。
あの足湯と同じ程度かと思う。

寒くて爪先の皮膚感覚がおぼろげになる。
と言うのはあるが、この銭湯の湯では熱くて爪先の皮膚感覚がおぼろげになる。
足の裏が白くふやける、と言うのはあるが、ここでは、赤くふやける。
しかし、これは修行が足りない私の感覚であって、
常連さんなどは、終始涼しい顔をしている。
何度も、湯船から入ったり出たりしながら、忙しい入浴を終えると、
帰る頃には辛かった寒風が、湯ざましに心地好かった。

【天候】
終日、雲多くも冬晴れ。