1523声 桜山 ~後編~

2012年03月03日

昨日の続き。

数年を経て、桜山があった場所の近くに、新しく小学校が出来ることになった。
この新たな小学校の名前は、近隣住民の投票で決めると言う。
回覧版で回って来た、三つの名前の候補の一つに、「桜山小学校」と言う名があった。
その名前見た時に、「みんな憶えていたんだ」と、感じた。
「高崎市なんたら第二小学校」などと、それらしい名前の候補がある中、
どう言う訳か、小学校の名前はこの桜山小学校に決定してしまった。
かつての鬱蒼とした雑木林は、近代的で大きな小学校に生まれ変わった。

現在、桜山小学校に通っている生徒たちあるいは先生までも、
なぜこの小学校が「桜山」小学校なのか知り得ないだろうと思う。
私は、桜山小学校と聞くたび、見るたびに、あの怖い森と楽しい夏休みの思い出が甦る。
もしかしたら、その昔は、桜が生い茂る山が、そこに実存したのかも知れない。
しかし、私には、桜山小学校の生徒と同じく、それを知り得るすべがない。
土地の名前を受け継いでゆく事は、土地に生きた人たちの記憶を受け継いで行くことでもある。
怪しげな場所が無くなってなんだか、あっさりさっぱり整然としてしまった風景を眺める。
私の心は何だか、新しく出来たものの喜びよりも、無くなってしまった古いものの寂しさに、ひかれている。

【天候】
終日快晴で、いよいよ春めいて来た。