1588声 思い出をひと跨ぎ

2012年05月08日

長い間、同じ街に住み暮らしていると、ふと、錯覚を感じる事がよくある。
今日の夕方である。
かかりつけの歯医者へ寄った。

ここの歯医者へは、通っていた高校の近所だったので、
その頃から、自分のかかりつけの歯医者としていた。
学校の帰り道、虫歯が痛んで寄ったことも、しばしばあった。
それから時を経て、大人になってからは年に一度くらいは、
何事もなくともなるべく寄るようにしている。
その、「なるべく寄るように」が、冒頭にも書いた今日で、
先日、ちと歯が痛むことがあったので、思い付いて寄ってみた。

歯の検診を受け、さして虫歯も見当たらずに診察は終了した。
ここの先生は、自分高校生時分の頃からなので、
かれこれ15年前から知っているが、ここ数年はことに頭に白い物が増えた。
高校生だった青年が、おっさんの駆け出しになっているのだから無理も無い。
歯科助手の方々も、代替わりして、今や皆、私よりも年若なお嬢さんばかりである。

浅く感慨に浸りつつ、診察券を預かって、この医院の見慣れた扉をあける。
入口に三段ほどある階段を、ひと跨ぎに下りる。
往来にはすでに宵闇が迫っていた。
ふと、目の前の光景が、学生時分に見た思い出の光景ではないか、丁度、紙芝居の様に、
入れ変わってしまったのではないか。
そう言う、思い出の中にいるような錯覚に陥って、またすぐ、
階段をひと跨ぎするように戻って、歩き出した。

【天候】
終日、快晴。