1624声 金属片

2012年06月13日

「ガリッ」
口腔内に突然違和感が走ったので、驚いて口の動きを止めた。
噛んでいたガムをびろーんと取り出し、眼を凝らしてみると、あった。
ガムにくっついている、小さな金属片。
歯に詰めていた金属が、取れてしまったのである。

丁度、かかりつけの歯医者のカードを持っていたので、夕方。
一番遅い時間に予約を滑り込ませて、診察を受けて来た。
その治療、と言うか施術はごく簡単な方法だった。
取れた金属片を元の場所へ、薬を付けてもう一度くっつける。
丁度、セメダインでプラモデルの部品をくっつけるように。

終わって、待合室で会計を待っていると、時間帯のせいであろうが、
女子高校生が三人もいた。
この歯科医院は自分の通っていた高校の近くなので、
自分も学校帰りに寄った思い出がある。
良く見れば、女子高生の一人は、自分の通っていた高校の制服を着ている。
あれからおよそ十五年の時を経て、歯の詰め物が取れて診察に来ている自分が、
ひどく情けなく思えて来た。
高校時分の私が、カランコロンとドアを開けて入ってきそうな妄想に捉われていると、
受付から少し無愛想に私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

【天候】
終日、曇天で涼しい。