夕立が去った後なのだが、とても蒸し暑い。
この気候の為か、最近頻繁にムカデを見かける。
歳時記を開けば、夏の項に「百足虫(ムカデ)」とあるので、丁度今時期。
彼らの活動が活発になるのかも知れない。
そうなるとムカデのことが気になり、本棚から図鑑を引っ張り出して来て調べよう。
そうは思うが、それが行動に移せない。
図鑑の頁一面に、ムカデの写真と共に図解されている文章を、
読む気にならないからである。
いま、思い返しただけでもいささか背筋が寒くなる思いがする。
最近見かけたムカデは、ごく小さい個体だったので、それほどおぞましい印象は無かった。
体長、3、4cmと言った具合で、チマチマ足を動かし行く姿には、なんだか愛嬌さえあった。
自宅裏のブロック塀と、風呂場で見かけた。
風呂場では他にゲジゲジも見かけている。
それで思い出したが、堀澤氏が昔借りていた四万温泉の家に初めて伺った晩、である。
季節は晩夏だったか初秋だったか、ともかく暑い晩であった。
着いてまず、玄関代わりの軒先で、小さな虫が出迎えてくれた。
良く見ると、竈馬、平仮名で書くと、「かまどうま」と言うコオロギに似た虫。
座敷に上がって、まず手を洗いに炊事場へ行くと、水道のシンクにかまどうま。
手を洗って、さて麦酒を取り出そうとすると、冷蔵庫の脇にかまどうま。
座敷で飲んでいると、テーブルの下にかまどうま。
兎も角、あちらこちらに、かまどうまかまどうまかまどうま。
昆虫が苦手な人ならば、どうにかなってしまうであろう。
はじめの間は、かまどうまを見かけると「ぎょっ」としたが、
かまどうまを踏まないように厠へ行ったり来たりしている間に、気にならなくなった。
そのまま、隣の畳で寝てしまって、翌朝。
居間でも炊事場でも玄関でも、かまどうまたちの姿を見ることは無かった。
【天候】
朝より曇りがちなる晴れ。
夜半に雨あり。