1659声 正露丸と麦酒

2012年07月18日

思えば、最近極端に米を口にしなくなってしまった。
連日の猛暑がその原因であるが、どうしても、
素麺やら蕎麦やら、「さらさら」と喉越しのよい食べ物を欲してしまう。

そして、夕食頃に麦酒など飲み出すと、もういけない。
そう言う生活をしていると、腹をこわすことは免れがたく、
こっちの方も連日、「さらさら」と言う状況である。

学生時分。
私の友人に、酒好き、それも私に輪をかけたような麦酒好き人間がいた。
麦酒好き人間の大半が負う宿痾がある。
それは特に夏場。
深夜までごくごくがぶがぶ麦酒を飲み、
翌朝も喉が渇いて、ごくごくがぶがぶ水分を摂取する。
そうなるともう、腹の虫が黙っているわきゃあない。
普段は空腹の合図くらいしか声を上げない、寡黙なる腹の虫も、
堪忍袋の緒が切れたのであろう、怒声を発する。
それを、トイレの中にうずくまってなす術もなく、ひたすら聞かねばならぬ。

この宿痾からできることなら逃れたいと思うのが、人の情。
この友人は夏場に酒を飲む場合には決まって、バッグから取り出す。
正露丸の瓶を、である。
つまりは、これから逃れる為に先手を打っておこうと言う考え。
学生で使える金もたかが知れているので、それは糖衣Aではなく、
昔ながらのあの御馴染の匂いのする、丸剤のものであった。
これを彼、4,5粒掌に出すと、麦酒で一気に流しこむ。
用法も容量もへったくれもあったものではない。
しかし、しばらく飲んでいたのでそれなりに効き目があったのかも知れぬ。
夏場の安酒場で麦酒を飲む時に、今でも、
そこはかとなく正露丸の匂いのするような心持になる。

【天候】
猛暑日、激しい夕立があり一時的に雹も降る。