思えば、最近極端に米を口にしなくなってしまった。
連日の猛暑がその原因であるが、どうしても、
素麺やら蕎麦やら、「さらさら」と喉越しのよい食べ物を欲してしまう。
そして、夕食頃に麦酒など飲み出すと、もういけない。
そう言う生活をしていると、腹をこわすことは免れがたく、
こっちの方も連日、「さらさら」と言う状況である。
学生時分。
私の友人に、酒好き、それも私に輪をかけたような麦酒好き人間がいた。
麦酒好き人間の大半が負う宿痾がある。
それは特に夏場。
深夜までごくごくがぶがぶ麦酒を飲み、
翌朝も喉が渇いて、ごくごくがぶがぶ水分を摂取する。
そうなるともう、腹の虫が黙っているわきゃあない。
普段は空腹の合図くらいしか声を上げない、寡黙なる腹の虫も、
堪忍袋の緒が切れたのであろう、怒声を発する。
それを、トイレの中にうずくまってなす術もなく、ひたすら聞かねばならぬ。
この宿痾からできることなら逃れたいと思うのが、人の情。
この友人は夏場に酒を飲む場合には決まって、バッグから取り出す。
正露丸の瓶を、である。
つまりは、これから逃れる為に先手を打っておこうと言う考え。
学生で使える金もたかが知れているので、それは糖衣Aではなく、
昔ながらのあの御馴染の匂いのする、丸剤のものであった。
これを彼、4,5粒掌に出すと、麦酒で一気に流しこむ。
用法も容量もへったくれもあったものではない。
しかし、しばらく飲んでいたのでそれなりに効き目があったのかも知れぬ。
夏場の安酒場で麦酒を飲む時に、今でも、
そこはかとなく正露丸の匂いのするような心持になる。
【天候】
猛暑日、激しい夕立があり一時的に雹も降る。