1721声 首だけのジョン

2012年09月21日

秋の彼岸である。
それに合わせるように、一挙に秋の気配が訪れた。
夕方、自転車走っていると、半袖ではもう寒いくらいであった。
そうなると、そろそろ、畦道では彼岸花が咲くころである。

宵闇が訪れて、暗がりの田圃の畦道。
虫時雨の中を、特にどこに行くでもなく、気分転換のため、自転車で走っていた。
遠くの夜景から、田圃に目を移して、「ぎょっ」とした。
「なななな、なまくび」
そう、紛れもなく生首なのである。

ぼさぼさの髪、精気の無い眼、薄汚れた肌。
しかし、みな、よく見れば欧米人のような端正な顔立ちをしている。
これは、もちろん案山子用のマネキンなのであるが、
なにも、首だけをグラスファイバーの棒に刺して、さらし首のようにしなくても。
おかげで、こちとら、心臓が「きゅーっ」となるほど、驚いてしまった。
一番手前のマネキン、仮に「ジョン」とするが、この首だけのジョンは、
往来からくるりと逆を向いていた。
そのまなざしの先には、煌々とショッピングモールの灯が見える。
ジョンはこんな姿になりながらも、
2階、レディースファッションコーナーに残してきた恋人のことを、
考えているのかもしれぬ。

【天候】
終日、曇ったり晴れたり。