1723声 ボールペン放浪顛末

2012年09月23日

木工作家の平井氏と料理家の堀澤氏。
この同級生コンビが、堀澤氏が店主をつとめる「ほのじ」において、
今日まで二人展を開催している。

昨晩はその交流会に参加し、当然、千鳥足で終電に乗り込むと言う、
コースを辿ることになった。
最寄りの新前橋駅に着いて、すこし夜風に当たろうと思い、
ふらふらと駅前の噴水広場のベンチに向かった。

思えば、伊勢崎へと向かう往路の時、電車の接続が悪く、
夕方のこの噴水広場で、30分ほど枯れた噴水を眺めていた。
その後、何時間か経ったいま、酔眼朦朧として、
やはりこの枯れた噴水を眺めている。
「あっ」と思い、バッグから句帖を取り出して、
一句書きとめようとして、気が付いた。
「このボールペン、夕方にこのベンチで拾ったヤツだ」

夕方にこの同じベンチで、ひとつボールペンを拾った。
拾ってはみたものの、何だか得体が知れぬし、書けるかもどうかあやしい。
しかし、こんな地べたで風雨にさらされては、このペンも浮かばれぬだろうから、
駅まで連れて行ってやろう。
駅に着いたら、まぁ、時刻表の脇に置いておくか、ゴミ箱に入れるか。
そんなことを考えつつ、ポケットに入れた。
それが、すっかり忘れてしまい、また元のこのベンチまで戻って来てしまったのである。
私は、むやみにこのボールペンを連れまわしただけだった。
なんだか、得体の知れぬ感情が込み上げて来て、一夜明けたいま。
自分の机の上のペン差しに、ささっている。

【天候】
終日、雨降り。