1731声 撮り手

2012年10月02日

胸の内が微かにふるえるような、写真。
例えば、その写真の構図は、花弁に乗る露の一粒。
その一葉には、もはや浮世とは思えぬ清浄な世界が写し出されている。
そんな写真を観ると、自分もすぐさま、何某かの一眼レフカメラを購入して、
野山へ出掛けたい衝動に駆られる。

しかしながら、仮にそんな立派なカメラを手に入れたところで、
私の撮る写真など、たかが知れている。
つい先日のことである。
酒席で出された料理を、座の隣人が熱心に一眼レフで撮り始めたので、
自分も釣られて、愛用の、と言うかそれ一台しか持っていないカメラで撮ってみた。

料理を撮る。
てぇのは、意外と難しくて、室内の光の具合などの関係だろうが、
なかなか素人では美味しそうに撮れない。
自分の例外でなく、がちゃがちゃとボタンを押すのだが、一向にうまく撮れない。
「あっ、それGRDじゃないですか」
と、先の一眼レフの隣人。
どうやら同じ機種のカメラを持っていらっしゃるようで、丁度よいので、
私のカメラを渡して一枚撮ってもらった。

何かのボタンを2、3回押して、焦点を合わせてパチリ。
「はい」と返されてモニターをのぞくと、美味しそうに照る、
鯛の刺身が写っているではないか。
撮り手によってこんなにも写りが違うものかと、愕然とした。
このカメラを購入してから、もう4、5年経つのである。
野山へ出掛ける際は、カメラよりも俳句帖のほうが、
自分に合っているとつくづく感じた。

【天候】
終日、雲多くも快晴。宵の口に一時的に小雨。