21声 ダザイ君は戻らない

2008年01月21日

「あーーーどーーーしょ」
と、一日中迷っていた。
先日或る所に本を忘れたので、本日取りに行こうかどうか迷っていたのである。
問題はその忘れた場所にあって、実はネットカフェに本を忘れてしまったのだ。
少し前までは「マンガ喫茶」なんて言われていた、この「ネットカフェ」。
もちろん店内にはマンガ本が豊富にあるのだが、その日は本を持参して行った。
金を払って行っているのに、インターネットもマンガ本も読まずに、持参した本を読み耽っている。
途轍もなく無駄な出費と思われるだろう、当然「だったら家で読め!」とつっこまれるだろう。
「イーんだイーんだ」、金を払って束縛してもらっているのであるから。
「金を払って束縛してもらう」なんて書くと、いささかマズイ印象になってくるが、あくまで「時間を」ね。

ここで、時間を束縛される事によってもたらされる安心感方面に文脈を掘り進めて行くと、
朝になってしまいそうなので話を戻す。

さて、ネットカフェに忘れた本であるが、運が悪い事にその日持って言ったのは「太宰治」である。
しかも全集。
「全集」ってのは図書館なんかによく全巻セットで置いてある、
背表紙が『日本の文学全集第六集「太宰治」』と言った具合の分厚いハードカバーの本。
相当昔、古本屋の105円コーナーで見つけて購入した。
「ネットカフェで持参した太宰治全集を読んでいる男性」
改めてこう書くと、いささか気味が悪い。
そして、果てし無く暗い。
「おい大丈夫か!」と問いたくなる。
私が問いたくなる位だから、忘れ物の本を発見した店員さんは、
「大丈夫か!」を通り越して「駄目だな…」と思っているに違いない。

もし取りに言ったら、「ほら、ダザイの人キタヨ、ほらあのゼンシュウのさ」なんて、ヒソヒソ言われるに違いない。
そうだ、やっぱり取りに行くのは止めよう。
すまないダザイ君。
いやしかし、それが一体何だって言うんだ。
良いじゃないか、ダザイ読んだって。
そうだそうだ…。
いやいや、やっぱ止めとこ。