先日の新年会での事。
いよいよ陽も傾いてきて、そろそろ酒でもと言う様な雰囲気。
皆での乾杯を待たずに、フライングしてビールを飲んでいる私。
テーブルの上に並んだつまみを迷い箸していると、何やら怪しげな物体があるではないか。
いや、食べ物を「物体」なんて呼んではバチが当たりそうだが、それにしても奇妙な姿形をしている。
コロッケを平べったくしてソースの中に潜らせた様な、薄黒いその揚げ物。
疑問に思った私は、隣に座っていた人に尋ねた。
「なんですかねぇ、コレ」
「なんでしょうかねぇ、コロッケみたいですけどねぇ」
瞬間、ハテナマークが出ている私達に割って入って来た威勢の良い声。
「じんころだよ、それ」
すると、周りの人も口を揃えて、
「じんころ、じんころ!」
「懐かしいねぇ〜そう言えばじんころのおじいちゃんとおばあちゃんは…」
なんて具合に、話の花が「じんころ」の一声で一斉に開花した。
良く見てみると、その誰もが伊勢崎出身者。
話を総括すると、どうやらこの「じんころ」と言う食べ物の正式名称は「神社コロッケ」。
隣の人はてっきり生姜のコロッケ、つまり「ジンジャーコロッケ」だと思っていたらしい。
むか〜しむかし、群馬県伊勢崎市におじいさんとおばあさんがいました。
と、日本昔話調で遊んでいる場合でいるから、文章がモタついてしまう。
そのおじいさんとおばあさんが、
伊勢崎神社周辺でリヤカーを引きながら販売していたのがこの「神社コロッケ」なのだ。
それもだいぶ前の話で、現在はリヤカー販売はされおらず、製法を受け継いだ店舗のみの販売らしい。
まさしく、昭和ノスタルジー感がビンビン伝わって来る「地コロッケ」。
もちろん私が住んでいる高崎市では、今まで見た事も聞いた事も無い。
どうりで、普通に「じんころ」なんて言われても、知っている筈が無かったのである。
なんだか、都市伝説を聞かされている様な気もする。
いや、その当時の神社コロッケは、もはや都市伝説化しつつある幻のコロッケなのだろう。
明日に向って続く