22声 幻の「じんころ」 前編

2008年01月22日

先日の新年会での事。
いよいよ陽も傾いてきて、そろそろ酒でもと言う様な雰囲気。
皆での乾杯を待たずに、フライングしてビールを飲んでいる私。
テーブルの上に並んだつまみを迷い箸していると、何やら怪しげな物体があるではないか。
いや、食べ物を「物体」なんて呼んではバチが当たりそうだが、それにしても奇妙な姿形をしている。
コロッケを平べったくしてソースの中に潜らせた様な、薄黒いその揚げ物。

疑問に思った私は、隣に座っていた人に尋ねた。
「なんですかねぇ、コレ」
「なんでしょうかねぇ、コロッケみたいですけどねぇ」
瞬間、ハテナマークが出ている私達に割って入って来た威勢の良い声。
「じんころだよ、それ」
すると、周りの人も口を揃えて、
「じんころ、じんころ!」
「懐かしいねぇ〜そう言えばじんころのおじいちゃんとおばあちゃんは…」
なんて具合に、話の花が「じんころ」の一声で一斉に開花した。
良く見てみると、その誰もが伊勢崎出身者。

話を総括すると、どうやらこの「じんころ」と言う食べ物の正式名称は「神社コロッケ」。
隣の人はてっきり生姜のコロッケ、つまり「ジンジャーコロッケ」だと思っていたらしい。
むか〜しむかし、群馬県伊勢崎市におじいさんとおばあさんがいました。
と、日本昔話調で遊んでいる場合でいるから、文章がモタついてしまう。
そのおじいさんとおばあさんが、
伊勢崎神社周辺でリヤカーを引きながら販売していたのがこの「神社コロッケ」なのだ。
それもだいぶ前の話で、現在はリヤカー販売はされおらず、製法を受け継いだ店舗のみの販売らしい。
まさしく、昭和ノスタルジー感がビンビン伝わって来る「地コロッケ」。
もちろん私が住んでいる高崎市では、今まで見た事も聞いた事も無い。
どうりで、普通に「じんころ」なんて言われても、知っている筈が無かったのである。
なんだか、都市伝説を聞かされている様な気もする。
いや、その当時の神社コロッケは、もはや都市伝説化しつつある幻のコロッケなのだろう。

明日に向って続く