23声 幻の「じんころ」 後編

2008年01月23日

一口食べてみると、コロッケなのに中面のポテト部分はモチモチ食感。
断面を覗くと、ポテトに青海苔が練り込んである。
ジャガイモをすり潰して、青海苔やら何やら混ぜてから揚げるのか、その製法に疑問が残る。
そして味付けはやはり、全体的ソース潜らせ型らしい。
その風貌や佇まいが醸し出すアヤシイ雰囲気や風味が、何処となく駄菓子を連想させた。
幼少時分より駄菓子などで培われた私の粗野な味覚は、
その様な懐古的な味わいを感じていたのだった。

とまぁ、味の感想ぐらいでついつい大袈裟な表現になってしまった。
己の野暮ったさには、書いていてつくづく閉口してしまう。

その製法に代表される様に、謎が多い分あまり断定的な事は言えないが、
この「じんころ」が伊勢崎市民土着食物である事は間違いない。
私の周りにいる伊勢崎市民氏からは、「えっ高崎なのにじんころ知らないんですか」と驚かれてしまった。
ここは断言するが、知っているわきゃーないよ。
鼻水を垂らした小僧から、杖を突いたお年寄りまで、
伊勢崎中心市街地人はみんな「じんころ」もとい「神コロ」を知っているらしい。
たしかに、おやつとしても酒のつまみとしてもイケそうだ。
現に、私が呑んでいるオンザロックの焼酎とも相性が良い。

「懐かしくなる味」と言うのは、この様ないつまでも変わらぬ手作りの味の食物なのだろう。
とりわけ「おふくろの味」なんて言われている食物である。
それらは、作り手の手から魂の成分が染み込み、食事で摂取する事により、
食べた人の血の中に魂の成分が溶け込むのだろう。
血液に流れるその成分こそが、度々味を懐かしがるのである。
と、私は信じて疑わない。

今、ここまで書き進めてきて思ったのだが、
この「神コロ」現在は伊勢崎市のどこに売っているのか聞きそびれてしまったなぁ。