87声 参道の女

2008年03月27日

高崎市にある榛名神社。
本殿から下へと続く参道は、少々長い階段の道。
脇にはコケの蒸した幹を晒している、杉の巨木が立ち並ぶ。
斜めから差し込んでいる午後の陽が、目の前に幻想的な映像を見せる。

そんな風景の中、しっとりとした風を切りながら階段を下っていた、
本日午後三時三十分。
途中、何組かの参拝客とすれ違った。
受験合格後、入学前のモラトリアム期間を家族と過ごす、
明るいファミリー風。
暇を持て余す春休みの大学生風。
定年後を悠々送るリタイヤ世代風。

しかし、いささか首を傾げてしまったのが、一人で来ていた参拝客。
それも、三十代中盤〜後半と思しき、なんだが陰のある女性。
「丑三つ時にはまだ早いしなぁ」
と、ついつい余計な詮索。
すれ違って少し歩いた所で、振り返って見ようと思ったがやめた。
その瞬間気付く。
陽の傾きかけた参道に流れる風が、ひんやりと夜の匂いを運んで来た事に。