156声 青年期或いは松田優作の物真似

2008年06月04日

高校一年時分の頃。
授業が終わると、掃除当番をほっぽらかしてソッコーで帰宅。
コカコーラをがぶ飲みしながら、TVの再放送「探偵物語」を観賞。
観終わると、主人公である工藤俊作こと松田優作の物真似にひたすら興じる。
と言うハードボイルドな生活を送っていた。

そんな生活の最中。
私はいつもの様に、自部屋の特設高座と呼んでいるコタツの上で、正座をしながら、
「はい、くどーたんてーじむしょ」
などと、コーラ片手に物真似の練習に勤しんでいた。

すると突然、後方のドアが開いて、親父。
「ドスッ」と一歩半。
狭い部屋なので、一歩半歩けば目の前。
「はい」って言って、親父がくれたのは、近所の本屋の紙袋。
顔を上げると、「ドスッドスッドスッ」っと階段を乱暴に下って行く音。

すぐさま紙袋を開けると、中には文庫本が一冊。
本のタイトルは、五木寛之著『生きるヒント5〜新しい自分を創るための12章〜』。
「なんじゃぁ−こりゃー」
って、声を出さずにジーパン刑事の真似。
そしてすぐに、疑問符が頭の上を小躍り。

その後、親父からは感想を聞かれる事も無く、物真似はもう飽きた。
春夏過ぎてもう秋が来て、一応読書。
一体、何だったんだろうか。
自分も自分で、そう言う時分だったのか、その後『大河の一滴』なんて買ってみたり。