2423声 美化しないでくれる?

2014年11月10日

亡くなった人のことを、どうしても美化してしまう。
尾崎豊も、夏目雅子も、フィッシュマンズ佐藤伸治も、高崎市出身の山田かまちも。

 

もう7年位前だろうか。仕事にかこつけて浦安にいた。
当時は築地の魚を吾妻に宅配する仕事を担当していて、河岸の本社が浦安にあった。
浦安には、日本映画学校在学時に同じチームになり、宮崎県で共に滞在取材をした
同級生の女の子が住んでいた。長い髪を一つにしばり、細身で、マニアックで、
「ふふふ」と不敵に笑う女の子だった。卒業してから3年ほどが経っていた。

 

「仕事で近くに来たからさ」と夕食に誘った。たわいもない事を話したと思う。
浦安は、川が多い町だった気がする。夜、人少ない浦安を彼女と歩いた。
僕の駄目さ加減も知っている子だった。半分冗談で彼女の手を握ろうとした。
「え!・・やだもう!」と拒んで彼女は、「ふふふ」と笑った。そして別れた。

 

彼女の訃報を聞いたのは、それから数年後だった。葬儀場には同級生が集まり、
なんでなんだという悲しみや怒りを露わにし、途方に暮れた。

僕も今までに幾人かの知人を亡くしている。父も亡くした。
そんな皆さんには申し訳ないが、彼女の「ふふふ」という笑みをよく思い出す。
ふと、「あいつの分までしっかり生きなきゃね」と思ったりもするが、
「自分勝手に私のこと美化しないでくれる?」と怒られている気もする。