金がないと、人は弱る。
今でもないので困りものなのだが、
一番のピンチは22、3のあの時か。
預金もなく、財布には、帰りの電車賃がない。
・・・でも大丈夫、と自分に言い聞かせる。
新宿にいた。日雇いバイトの給料を受け取りに行く。
「認印が必要です」と受付の兄ちゃんに言われる。
取りには戻れない。目の前が暗くなるのがわかる。
・・・でも大丈夫、と自分に言い聞かせる。
新宿西口界隈の100円ショップを巡る。
3件目にして「岡安」の判子をゲット。
もらったのは数万円程度。
口座に入れる・・ではなく、最初の使い方は決めていた。
100円ショップを回っているうちに、
ちょっと老舗っぽい洋食屋の看板、
ロールキャベツの文字が目に留まった。
10月頃だった。
めったに食べないし、食べようとも思わないロールキャベツだが、
その時食べたものは、ちょっと泣くくらい美味しかった。
金はない。先も見えない22、3歳である。
ロールキャベツをハフハフ食べながら、
・・・でも大丈夫、と自分に言い聞かせた。

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