578声 夏の習性

2009年07月31日

取りこんだ洗濯物にでも紛れ込んだか、
親指位はあろうかと思われる、大きな蛾が一匹、部屋に入った。
私が帰宅し、部屋の電気を点けた瞬間、目の前を横切る影と羽音。
黒い影は、「ブーン、コツン、ブーン、カツン」と、天井の蛍光灯に激突しては弾かれ、
また激突して弾かれと言う、飛翔行動を繰り返している。
私は、窓を開け、丸めた新聞紙で誘導しようとするのだが、
どうしても蛍光灯の光に吸い寄せられてしまう。
羽虫の習性なのだろうが、蛍光灯に激突していても、いずれ息絶えてしまうだろう。
それでも、光の傍で往生する事を選ばざるを得ない、運命なのだ。
明日から2日間、高崎市街地では、「高崎まつり」が開催される。
そして、明日から8月入り、日本各地で祭りの季節が到来する。
この祭りに、吸い寄せられてしまうのが、お祭り人間である。
もう、祭り囃子が聞こえて来ると、お神輿を担がなくては、居ても立っても居られない。
俗に言う、「血が騒ぐ」と言う状態で、どうしても祭りのさざめきの方へ、
足が向かってしまう。
これも、習性である。
蛍光灯の電気を消して、丸めた新聞紙で追うと、迷い蛾は窓から飛んで行った。
窓の外は宵闇。
思い出した様に鳴き出した蛙の声が、暗い部屋に響いた。