3645声 一見すると変わらない

2016年11月01日

抜井さんが句集「真青」を出した。と聞き、その快挙はひとまず置いておいて(!)、共通の知人であるTさんが「ネット俳句?で有名なクズウさんて方が岡安さんの事知ってましたよ」という連絡をくれた。クズウさんとは葛生淳一さんのことで、僕は過去に面識がある程度なのだが、その時に「強面で真面目」な印象しかなかったので「俳句もやるの?」と驚いた。で、検索したらクズウ氏の俳句はすぐに見つかり、なるほどユーモア抜群で実感もこもっており、言葉の並べ方が面白い。まさに句作を楽しんでいる句のように思えた。

 

そんなことをメール上で抜井さんに送ったら、「私などは真逆で、いわば、ピルスナーばかりを何種類も…。身につまされます。」という返事が返ってきた。彼は実際ハイカラなビールよりもサッポロやモルツ、一番搾りといったピルスナーを好みそうだし、奇をてらった句も少ないに違いない。けれどこの返事は必ずしもへりくだっているわけではなくて、そんな自分にある種の自信を持っていることも感じさせた。

 

めっかった群馬に今書いている4人は、誰かに選ばれたわけでもなく、抜井さん堀澤さんがはじめた日々の投稿に、「気軽にやってみない?」とすーさんと僕が騙されて(!)入っただけのことである。でももしかすると4人とも、「派手な起伏はなくて、一見すると変わらないけれど、小さく変化していくこと」が好きかもしれないと思う。日ごとに味を変える発酵食とか、同じビールなのに今日ななぜ苦いのだろうとか、普通の顔してるけど心は泣いてるとか。

 

今日、大きな本屋でふと「ヌクイリョウイチ」と検索したら、「真青」が検索結果に出て、「在庫0。お取り寄せになります」という表示が出た。失礼な話だが、お取り寄せなところがいいな、と思った。読んでもいないので乱暴な推測だが、「真青」はきっと、すっと天を仰いで「空が青いな!」という本ではなくて、1度1度顔を上げて、たまに3度顔を落として、また少しずつ顔を上げて、ようやく空の青さが視界に入るような本に違いない。出版、おめでとうございます。