3652声 職人酒場

2017年11月11日

毎年足を運んでいる「秋、酒蔵にて」の最終日前夜。このイベントで一番盛り上がりを見せる参加作家・お客さん入り混じっての大宴会に足を運んだ。

 

会場となる旧廣盛酒造からは、寒さも何のその、多くの人の笑い声が聞こえてくる。僕が足を運ぶようになった8年前くらいから見知った顔、参加作家を束ねる漆職人の吉澤良一さんや、鉄作家の鈴木浩さん、木工芸の外丸治くんなどの顔が見える。また、六合在住の機織りである行松啓子さんや、キャンドルでの参加の奈々子さんなど、途中から加わった顔、僕よりずっと若い職人さんたちの顔もある。

 

多くのモノに溢れ、インターネットを介せば人に会わずしてモノが届く時代の中にあって、1つ1つのモノ作りに時間を手間をかけ、それを対面で売る職人たちの行為は、非効率でありおおごとだ。「作家がどういう人間かは関係ない。モノの良し悪しが全てで、技に魅入られて手にとってくれれば良い」という気概をもってやっている職人ばかりではあるが、売り買いだけのドライな関係は好まない人好きな職人たちが多いのが「秋、酒蔵にて」の特徴。人を好きになれば、その人が作ったものを欲しくなる。その順番でも、大いに良いのだと思う。

 

8年通っても僕は相変わらずびんぼー生活で、お金の理由だけではなく「買っても使う場所や機会がなければ意味がない」とも思うので、展示販売されているものはもっぱら見るだけだったのだけれど。昨年からこのイベントでは「1点買う」ことを決めている。昨年は森乃手仕事家の革のキーホルダー。毎日使い込んで1年とは思えない色になった。

 

そして今年は、2〜3周したあとに、行松さんが染めて織った小さな絹織のテーブル掛けを買った。六合の五倍子という植物で染めたのだという。僕が買ったことを行松さんが喜んでくれたのも嬉しかった。会社のテーブルの上に置いて、携帯などを置こうと思う。これを見るたびに、「縦糸横糸1本1本織っていく苦労に比べれば、簡単なもんだ」と仕事にやる気が起こせるかもしれない。

 

久々に、飲みすぎた。「秋、酒蔵にて」は、愛されるイベントだ。