4272声 黄金

2019年07月27日

この山にはたくさんの宝が眠っている。気づかないだけだ。

 

伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞受賞作品『黄金』の撮影が始まっています。毎年の関わり合いの中で、シナリオ大賞作品はどれも印象深いのですが、この『黄金』は笹谷遼平監督と共に映画協力者探しに東京を彷徨う経験もし(笑)、関わりも深めなので並々ならぬ思いがあります。

 

過去にも30人の受賞監督がいましたが、ガチなドキュメンタリー畑出身者は笹谷監督が初めて。北海道帯広市の「ばんえい競馬」などを追った笹谷監督によるドキュメンタリー『馬ありて』は今年劇場でも公開されています。ドキュメンタリーから劇映画へ移行した監督というのは、是枝裕和や河瀬直美など、今の日本映画のトップランナー的な方も多く「現実にあるもの、起こったことを、いかにフィクションとして立ち上げるか」が注目されます。その見方で言っても、笹谷監督のこだわりは並々ならぬものがあります。

 

 

この『黄金』は、1965年という時代設定であり、過去日本の山村に暮らしていたとされる「サンカ」と呼ばれた放浪民の物語です。時代設定から言って、ロケーションや映る背景・洋服・モノ・車に至るまで、当時のものを集めるのは用意ではありません。優秀な美術チームの他に、実に多くの町民の方にすでにご協力をいただいています。

 

下見の時から六合入山の山本茂さんにはお世話になってますし、竹カゴを編むおんとし90歳ほどの関完治さん、竹細工の飯塚真澄さんにも何度もお会いしました。今日の上毛新聞でもばっちり写っている川魚は山本秀明さんが釣ってくれたものですし、四万温泉・くれないさんも協力を快諾。隣町からも「昭和のくるま」のみなさんが自慢のレトロカーで協力してくださり、地元の伝統芸能保存会協力による重要なシーンの撮影もあります。そのほか、僕が把握しきれていない協力者も多々いて、なにより映画祭スタッフ・六合在住の諸角よーこちゃんがまるで「自分の映画だ」というような多大な協力をしてくれています。

 

つまりは、人や技術、モノや生き物・・「中之条町がすでにもっていたたくさんの宝を、映画の中で再び立ち上げるプロジェクト」が『黄金』である、とも言えるわけです。

 

 

長くなりましたが、近隣出身ながらなかなか映画祭で関係を持てなかった渋川清彦さんの出演も決まり、さらに期待が高まる『黄金』。11月の上映の際には、関わってくださった町民みなさんやあなたと共に、その誕生を祝いたいと思っています。

〈上毛新聞記事〉