梅雨による時化のため市場には魚が少ない。人気の魚屋の店主はいい魚が入らなければ元気がない。これはもういい魚を知ってしまった者が罹ってしまう病みたいなもので、いい魚が手元になければ身体に力が入らないのである。アオリイカと鰻と鰹だけ仕入れて帰ってきた。鰹は5~6本あった中から一番脂のあるやつにした。とろっとたわみのあるもちもち食感でミネラルより旨味が先行して口の中に広がる。しかも身と皮の間にはびっしりと脂が乗っている。当たりだ。それだけでニタっと笑顔になり活力が湧いてくるのだから、私も魚屋の店主と同じ病である。