5897声 父の帰宅

2024年07月30日

母が白内障の手術をしたため眼科への送り迎え。一週間かけて左右の目を手術し、その間父は一時宿泊を受け入れてくれる病院へお世話になる。こういうことでもないと実家へ帰らない私には実家へ帰るいい機会となった。久しぶりに帰った実家の庭は草ぼうぼうだった。庭仕事は少し前まで父の仕事だった。父は几帳面だからいつも庭がきれいになっていたものだが、急に足腰が弱くなり庭仕事ができなくなって一年くらい経つ。その後は母がコツコツやっていて、けれども季節は夏になり最近の猛暑続きで、また今回の目の手術もあり思うようにできなかったようだ。きれい好きな両親だからうまくできないのはストレスだったろうと思う。母の診察が終わり家に戻り父を待つ。病院に預けられていた父が一週間ぶりに我が家に帰ってくる。母によればこの一週間、父から度々電話があったそうだ。内容はだいたい病院の文句と、一週間も泊まるなんて聞いてないというこれもまた文句で、目の手術の心配など一つもなかったという。病院の車が家に到着して、付き添いで来た病院の方にブツブツ言いながら前かがみの父がよたよたと歩いてくる。どんな文句が始まるのだろうと母と玄関口で出迎えると、満面の笑顔で「お母さんのおいしい料理を食べに帰ってきました」だって。なんだ、上機嫌じゃないか。「あれ、誰かいるな」いつもはいない息子に気づいて、家に入るやいなや、早速病院の食事がおいしくなかったことをこぼし始めた。「あれはも〜地獄だよ。これも人生のいい経験だと思って頑張りました。でもほんっとにまずいんだから」母がプリンを冷蔵庫から出してきて、「そんなにまずいものばかりだったらおいしいでしょ」と聞けば、「とくに、おいしい」と返す。なんだか元気そうでよかった。そういえば、久しぶりに間近で見る父の顔は亡くなったおじいさんにとてもよく似ていた。自分もきっとこんな顔のおじいさんになるのだろう。